とある労組事務所と福祉事務所で立て続けに猟奇的殺人事件が発生した。凶器は刃物による刺殺の他、毛髪や断裂した皮膚組織に残留した錆から鉄製の工具による撲殺と判明。
また部屋が荒らされた痕跡があったが金品よりも何らかの書類を捜していたらしく、周囲の紙束やデスクに被害者達の血痕があった。
毛髪等は見つからなかったが、警察機関はホワイトボードに『レ級参上』の落書きを発見した。犯人からの意味深なメッセージに捜査は難航した……。


横須賀鎮守府提督長執務室は、警察や憲兵からのデータ収集の他にも独自捜査で情報を仕入れていた。事務所にあったパソコン類は一度接収し、明石、夕張、時雨、天霧等がディスクを洗いざらい解析している。

そしてとある日の昼、通報により怪しげな黒いレインコートの青年がとある庁舎へ向かっていると偵察隊から入電があった。上から下まで黒ずくめな奇妙な青年だった。


難なく庁舎に入り込んだ青年。彼は足がつくのを恐れ静かに階段を使い、いざ役員室へと向かおうとしたその時。何者かが後ろから硬い棒状の物体を、静かに彼の後頭部へ押し当てた。
後ろにいたのは本物の戦艦レ級だった。


「お前……誰だ?」
『!?』
青年は走って上へと逃げようとした。しかしレ級の方が足は速い。すぐさま追いつかれ、青年はその場でボディブローを喰らい、昏倒したまま拘束された。
「……拘束した。足は大丈夫かい?」
「問題ないわ」
加賀はR32を庁舎前に勢い良く留め、レ級と拘束した青年を載せて横須賀まで一気に走らせた。
青年は、ほとんどそっくりにレ級服やウィッグを着こなし、肌を白塗りにしていた。


横須賀に到着し、武器を没収された青年は提督長に突き出された。
「なーるほど、確かにレ級そっくりだねえ……ボク、名前と所属は?」
『……………………』
「親御さんは生きてる?」
『……………………』
「……どうしても答えたくない?」
『…………』
青年は、静かに頷いた。
「困ったねえ、取り敢えず隔離かな……あ、明石ちゃんどうした?」
「それが、この子かなり酷く病んでるみたい……強い薬と手帳が見つかりました」
「じゃあ、取り敢えず隔離だね」
「そうしましょう……」
青年は、併設する病院内部の隔離病棟へ収容された。


後日、件の捜査班より提督長へ報告書が提出された。
「やはり……」
そう、青年が強襲してまで調べていたのは野党議員との取引の記録であった。殆どの書類はシュレッダーの断片になっていたが、残っていた(青年が掴んだ)血まみれの書類、USBメモリ、ハードディスクのテンポラリに証拠となる記述があった。
それと同時に明石からの入電で、青年が提督長やその所属達と話がしたいと申し出た事が提督長の耳に入った。

れきうちゃん @re_chan_86

(落丁埋め)

提督長に対して青年は、今の恋人が鬱病で苦しんでいる事、自分もまた躁鬱病の重篤な症状が露呈しつつある事、そして身寄りのない恋人に対する職務怠慢な福祉事務所が許せなかった事を供述した。
提督は「そんなに死ぬ気で護りたいなら、他に方法はなかったのかい?」と、責め立てるでもなく尋ねた。
しかし青年は、「現在の無欲恬淡な堕落しきった社会を生んでいるのは自称正義の味方の吐き気を催す大人共だ、奴等クソ共は60年代の恥部だ、誰もが蒸し返したくない暗部だ、それを捻じ曲げるつもりは毛頭ない、だから悪役に堕ちて警鐘を鳴らした、悪役には侵略すべき理由があるのを忘れたか」と啖呵を切った。
青年を説得する事は出来ないと思った提督は「最悪の場合、君の処刑についてはどう思う?」と尋ねた。
それについては唯、「一向に構わない」と彼は答え、質疑応答は終った。
夕方彼は、過去の服薬履歴から最適と思われる睡眠導入剤を処方された。