やんま @yanma_cco@pawoo.net

蓮始開 Show more

温風至 Show more

現代まっご(記憶なし) Show more

半夏生 Show more

「幸村さまぁ」
「俺は半蔵だ」
「生きたいと、一言、おっしゃればぁ」
「真田幸村はそっちで缶チューハイ飲んでるだろう」
「鎧の下賜なんかよりさぁ」
「佐助殿、飲み過ぎだぞ。俺の伊蔵が、あぁ……」

朝から佐助が不安定である。
鍛練では打撃に力が入っておらず、しばしば旋棍がすっぽ抜けていた。茶を淹れれば急須を落とし、湯呑みに注げば湯が溢れる。おかずは塩辛いか薄味であり、見事なぽんこつ具合であった。
なにより俺から離れようとせずいつも以上に身辺の世話を焼こうとする。
そうはいっても、今日は俺も似たようなものである。
槍先はぶれて狙いが定まらず、足さばきも覚束ない。口に当てる前に湯呑みを傾け、俺が炊いた飯はべしゃべしゃであった。
目蓋を降ろせば甦る炎の緋と、白銀の一閃。
静かに息を吐き目の前に座る佐助を見る。もそもそと気だるく咀嚼する姿は、それでも生きるための営みであり、安心するところがある。
食事が終わったら一緒に片付けをして、酒でも飲もうか。お天道様はいまだ高いがたまにはいいだろう。
二人のぽんこつが能天気に酌み交わす様を思い浮かべ、ふふと笑った。
(現代 5月7日)

菖蒲華 Show more

乃東枯 Show more

「戻ったぞ半蔵」
「お帰りウイリアム」
「上の階の、真田さんにそこで会うた」
「ほう」
「ご友人の猿飛さんも一緒であった」
「ほほう、その手にある袋はどうした」
「真田さんから実家で採れた梨を貰ったのだ」
「そっちの紙袋は」
「猿飛さんから半蔵へと。栄養豊富だと言っていたぞ」
「そうか、今度礼を言わねばうっ」
「どうした半蔵うっ」
「…………俺は喰うぞ」
「俺は喰わん」

閑話2 Show more

閑話 Show more

梅子黄 Show more

腐草為蛍 Show more

螳螂生 Show more

麦秋至 Show more

紅花栄 Show more

蚕起食桑 Show more

延べた床の枕元に成釜狸がうずくまるのが見える。気落ちしているのか動く様子もなく、か細く鳴く声が届いてきた。
天下取りに乗り出した時から傍にある存在であったが、こうも元気のないのは初めて見た。それは自分もか、とひねっていた首を元の位置に正す。
三ヶ月ほど前は鷹狩りにも出ていたというに、我ながら情けのないことと思うが、これも天命というやつか。天井の梁を見つめてやり残したことは無いかと思考を巡らせるが、浮かんでは霧散してゆく。
「…つれて行ぬを、別とぞ思ふ、か」
首元に霊体ならではの温もりを感じ、常世へまで連れ立ってゆけぬのを強く感じた。
部屋は薄暗く、しかし夜明けの気配をのせた空気がどこからか流れ込んでくる。いささか目を覚ますのが早すぎたかと、再び目を閉じた。

(元和二年 4月17日)

半蔵「てーれってれー」

「半蔵、なにをしている」
「ウイリアム、ちょうどいい所に。そこの粉をここへ入れてくれ」
「何かの調合か」
「まあな」
「色が変わったぞ!」
「ああ」
「ふわふわとしてきたな」
「ああ」
「この鮮やかな粒はなんだ」
「これをつけて食べるそうだ」
「なんと、食べ物なのかこれが」
「ああ」
「信じられん」
「意外とうまいぞ」
「………不思議な味だ」
「魔法によって変化しているらしい」
「錬金術か」
「いいや、魔法だ」