ただ今のトゥート!をもちまして
『無印良賓!』第一部完でございます。
 なんとか365話書きました!途中トラブルがあって途切れたのが無念ではありますが、一応一年間続けることができました。感謝感激雨霰絨毯爆撃でございます。
 しかし……全然話が進まなかった!地図やら各城の位置やら各城の戦力やらまで作ってたのに! それらを攻略する戦記物の予定だったのに! あれぇ?
 体勢を立て直すべく、まずは第一部完で仕切り直しでございます。
 ではでは……
 みんな! 愛してるよ!




無印良賓!_365 

「そうですわね」
 私の脇でレギナが頷く。
「それでは最後のお披露目といこうか」
「……本当に大丈夫ですの?」
 強気なレギナが不安げな表情を見せる。
「さてどうかな?」
 私は少し意地悪く首をかしげた。
「なにせテストをする暇がなかったからなぁ」
 そういうと脇に控えるストゥディに目配せをする。ストゥディはうなずくと手をかざし何かをつぶやいた。
頭上に置かれたイズペトラを仕込んだ筒から炎が立ち上る。
私たちを乗せたゴンドラがゆっくりと昇る。
「熱気球とはベタなんだが」
「空を飛ぶなんて……すごいですわ」
 私の腕につかまってレギナはそう答えた。
「このままカシマまで、まいりましょうか?」
「そして一気に戴冠を受けるか?」
 私は笑いながら下を見渡す。
群衆が歓声を上げているのが見える。
私はその群衆に手を振ってこたえた。
「ま、よきにはからえ、だ」
 そう言って私は笑いながら再び大きく手を振った。
         第一部完




無印良賓!_364 

「細かいところが残っておりますので、あと半月といったところでしょうか」
「すまんがそこにこれを加えてくれ」
 そういうと私はストゥディを見る。ストゥディは巻かれた紙をテーブルに広げた。
「何か熱心にやってると思ったが……これか」
 サピエスはテーブルに広げられた紙……図面を見る。他の面々ものぞき込む。
「詳しことはストゥディに任せてある」
「欲しいものはこれにまとめてあります!」
 ストゥディは別の紙束を取り出すとサピエスに渡す。サピエスはそれをめくっていく。
「無理といってもやれとおっしゃるのでしょうね」
「無論だ」
「まぁ問題ないでしょう」
「では皆の者、よきにはからえ」
 ※ ※ ※
その日は快晴だった。
「よい門出だな」



無印良賓!_363 

「いえ、禅譲は宣言しておりますので、形式上はすでに国王にはなっております」
 サピエスはゆっくりとそう答える。
「なるほど、解った」
 サピエスが次の言葉を発する前に私はそう答える。
「王とは皆が認めて初めて王となる、ということか」
 その言葉にサピエスが頷いた。
「先の戦いで一定の支持は得られていると思われます。しかしやはりここでもう一押しほしい」
「それがれぎたんとの婚儀というわけだ」
「本当に閣下は話がお早い」
「担ぎやすいだろ?」
「本当に。ただ察しがよすぎて、そこを警戒されるかもしれません」
「なるほど、聡過ぎるのもいかんか。ここではともかく他では注意しよう」
「準備はどの程度整っておりますの?」



無印良賓!_362 

「最低限ということは、何とか動かすだけの人員は確保できたということだ」
「それはまぁ、そうです」
 サピエスが苦笑交じりに頷く。
私、国王ぱしゃりん
王妃れぎたん
学者兼王女付すときち
宰相さっちゃん
将軍みっちゃん
軍師兼装王立図書館司書こんちゃん
この六人が現王室の中央だ。
実際は最後の三人、私の命名するところの『さんちゃんズ』が取りまとめることになるだろう。
私が出る幕は、まぁ無い。と、思いたい。
「早速ですが」
 サピエスが口を開く。
「まずは速やかにぱしゃりん閣下には国王になっていただかないと」
「……まだなっていないのだったか?」



無印良賓!_361 

「どこに、といってもだな……」
 そこまで行った私をレギナが止めた。
「どこにです?」
 再びレギナが問う。
 私はレギナを見つめ、ストゥディとコンシリアに視線を回し、その視線を再びレギナに戻す。
そうしてからゆっくりとうなずいた。
「無論、王都王城に戻る」
 それから間を置き、もう一度頷いた。
「そしてわが玉座に座ろう」
 それから再び間をおいて、力を込めてこう答えた。
「余……いや、私自身の意思で、そこに帰ろう」
「ようやくのお帰り……」
 ※ ※ ※
「ずいぶん人も増えたな」
 私は円卓に座る面々を見る。
「まだまだ最低限です」 



無印良賓!_360 

「言えることは?」
「こちらはこちらで譲れないものができたということだ」
「譲れないものですか」
「もはや私には何をどうしていいのかわからん。それならば、今ある現状を、唯々諾々と呑み込むだけだ」
「……本当に、まったくもってあなたらしい」
「流れに逆らわず、流れに乗るのが流儀でな」
「流れに乗る? 流れに流されるの間違いではございませんこと?」
「辛辣だな。しかし、否定はしないし、それで余は構わない」
 そう言って私は胸を張る。
「余が沈まぬよう、うまく流すのがそちたちの仕事なのだからな」
 そう言って私は笑った。なにか、久しぶりに心の底から笑ったような気がした。
「さて、戻るとしようか」
「どこにです?」



無印良賓!_359 

「夢?……ああ、そうか、『夢』か」
 レギナに言われて頷いた。
これは夢。
そう思い続けていたはずが、いつの間にか自分の心から抜け落ちていた。
まるでしこりが落ちるように。
無論残してきたものに後悔はある。ただその後悔もあいまいな記憶に薄れ……
そう、まるで夢のようだった。
目覚める前が夢なのか、目覚める前が夢なのか。
実際のところは『今見ていないほうが夢』ということなのかもしれない。
「まぁそうだな」
 私はレギナに微笑み返す。
「何が夢で何が夢でないのかもはやわからん。というか、もうどうでもいい」
「あなたらしい」
 レギナが呆れたようにやさしく微笑む。
「ただ確かに言えることは」



 

 

無印良賓!_358 

「物が下に落ちるのは当り前ですわ」
 レギナが少し困惑したようにそう答えた。
私はレギナに対して頷いて見せる。
「その当り前がなぜ起きるのかを解き明かすのが物理学というわけだ」
「おもしろいですねぇ!」
 早速ストゥディは食いついてきた。好奇心旺盛な彼女ならまぁそうだろう。
「それでなんでコインは下に落ちたんですか!」
「……えーと……重力? いや、引力か? 万有引力でよかったか?」
「はっきりしませんわね」
 レギナが少し呆れたように、しかし笑みを浮かべて応えた。
「余は学者じゃないからな」
 私は肩をすくめて見せる。
「それにこの世界の理が余の元居た世界の理と同じとは限らないしな」
 そう答える私をレギナが見つめる。
「もう『夢だ』とはおっしゃらないのですね」




 

無印良賓!_357 

「簡単な実験の手順を書いた本だな。物理系の実験だから特別な薬品や化学物質は必要ないだろうからお扱え向きといえるかもしれん」
 コンシリアの問いに私はそう答えた。
「物理……というのは?」
「物の理だな。世界の普遍的な法則を解明する学問……だったとおもう」
「理ですか!」
 ストゥディが嬉しそうに応える。確かにそういった学問が好きそうだ。
「しかしそのような世界の根幹にかかわる学問を、子供がするのですか?」
 レギナが不思議そうに問う。
「難しく考えると難しいが、世の理というのは結構単純だ」
 そういって私はポケットに入っていた小銭を一枚手に取ると床に落とす。小さな金属音が部屋に響いた。
「なにを?」
「さて、この小銭はなぜ下に落ちた?」




 

無印良賓!_356 

「どんな本なんです?」
「すこし背表紙がかすれてるが……いきいき物理……かすれて読めないな……実験……うん、なんとなくよさそうだ」
 私は本を開く。
意外と紙はもろくなっていない。ただ手触りが少し妙な感じがする。
ひょっとすると長持ちするように、何らかのコーティング処理が施されているのかもしれない。というか、されていなけらばおかしいだろう。
奥付を見ると2002年の発売となっている。
「今西暦何年だ?」
「せいれき?」
 三人が顔を見合わせた。
「いや、なんでもない」
 それだけで私は納得した。聞くだけ野暮だ。
なにせ神代と呼ばれる時代の本なのだから。
「それでどんな本なのですか?」
 


夢の中のお話 4月25日 

「どこにあるか、判るの?」
レイナの顔を見つめながら、レイニィーが問い掛ける。レイナは首を縦に振る。
「見当はついてるわ。パパの言葉通りならね。」
そう言って、レイナは立ち上がり、校舎入り口に向かって歩き始めた。
そのレイナの後ろを、三人は着いて行く事にした。
「パパは、私達に判る様にって言った。裏を返せば、私達にしか判らないという事。」
レイナの言葉に、ハッとする三人。
「それじゃあ・・・。」
「うん。」
昇降口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替える四人。そして、目的の場所に向かってまっすぐ進む。
四人の足が扉の前で止まった。扉の上には、保健室と書かれていた。
「ここの地下室と、隣の教室の地下室。そこに調査結果があるはずよ。」
レイニィーが引き戸を開けようとするが、引っかかりがあって開きそうにない。
「レイナ、鍵が閉まってるわよ。」
「判ってる。」
そう言って、レイナは鍵穴に人差し指を乗せる。次の瞬間、カチャという小さな金属音が聞こえた。

Show thread

無印良賓!_355 

「さて、どう説明すればよいのか」
「えっと、自由研究の参考書って何ですか?」
 ストゥディが口をはさんでくる。
「自由な研究課題を提案する本、といったところか」
「提案された時点で自由じゃないような気がするんですが?」
 素朴だが本質を突いた疑問だ。
そして私にはその疑問に的確に応える回答をがない。
「それは自由の定義によるのではないか?」
「自由の定義?」
「そんなことより本だ本」
 とりあえず適当なことを言って煙に巻き、話題を変える。
「まぁ背表紙を見ていけば見つかるだろう」
 そういって私は陳列されは本をゆっくりと眺めていく。
そして一冊の本に目が留まった。
「これなんかどうだ?」
 


無印良賓!_354 

「……なんでしたっけ?」
 ストゥディが首をかしげる。そうしてから不意に小さく笑い出した。
「冗談です。あたしだって一応王学院の学生なんですよ? 目的はちゃんと忘れません」
「本気で言っているのかと思ったよ」
「わたくしも本気かと思いましたわ」
「おいらはコメントを差し控えます」
「……ひどいですぅ」
 気落ちして見せるストゥディ。
「まぁまぁそうしょげるな。とにかく本を探そう」
 そういって私は陳列された本の背表紙を眺める。
「どういった本を?」
「科学系の図鑑みたいなのがいいな。自由研究の参考本とか。なぜなに科学とか。そんな感じのやつだ」
 私の言葉にコンシリアは首をかしげる。
「それはどういった本でしょう?」



無印良賓!_353 

「そんな難しいものを子供が読むんですか?」
「まぁ……これは絵本だからなぁ」
 ストゥディの問いに私は本を何気なくめくる。
「何か難しそうです……」
 のぞき込むストゥディがそうつぶやいた。
確かに絵本とはいっても絵は少ないし文字も多い。児童書の皮をかぶった大人向けの本だよなぁ、とは私も思う。
「それを訳すことはできるのでは?」
 コンシリアが何気なくそうつぶやいた。
「神代文字が読み書きできる陛下であれば」
「余のことはぱしゃりんと」
「あ、えっとぱしゃりん様」
「まぁできなくはない……とおもうが」
 そう言いながら私は絵本を閉じた。
「次に機会だな」
 そう言って本をもとの場所に戻す。
「えー残念です」
「今回の目的は違うだろう?」



無印良賓!_352 

「哲学的?」
 その言葉にすぐに反応したのは意外にもレギナだった。
「確かに寓話の類はそのようなものが多いですわね。どのような教訓を示した話なのでしょう?」
「そこが結構わかりづらいから哲学的といったのだ」
 私はレギナにそう答えるのが精いっぱいだった。
「話の流れをかいつまんで言うと、小さな星の王子様がいろいろな星をめぐって地球にやってきて、最後には毒蛇にかまれて死ぬ。という話だ」
 沈黙が流れる。
「申し訳けございませんが……」
 レギナが口を開く。
「何が伝えたいのかよくわかりませんわ」
 その言葉に私も頷いた。
「言いようがないんだよ」



無印良賓!_351 

「ここには何と書いてあるのですか?」
「なんだろう。レ・プチ・プリンス?」
「意味は何ですか?」
「このままだと多分『小さい王子』になるのか?」
「確かに王子様らしき絵が描かれていますね」
「でも日本……神代文字では『星の王子様』というタイトルで知られている本だな」
「そうなのですね」
 興味深そうにのぞき込む三人の前に、私は本を開いて見せる。
「絵が多いですね」
「これは絵本のバージョンだな。原書はもっと文字が多い」
「読んだことがおありなのですか?」
「さっとはな」
「どんなお話なのです?」
「なかなか難しい質問だな」
 私は思わず苦笑する。
「実はこの本はものすごく哲学的でな」



無印良賓!_350 

「すごい懐かしい気分だ」
 私は書架に並んだ本のなかから一冊を手に取ろうとして止めた。
「勝手に手にとっても差し支えはないかな?」
「ご随意に」
 コンシリアはうなずく。
私はうなずき返すと手に取ろうとした一冊に手を伸ばす。
「懐かしいな」
 黄色い表紙に剣を携えた少年の絵。
「この本持ってたよ」
「その表紙のこれは何ですか?」
 ストゥディは表紙に書かれた文字を指さす。
「英語じゃないな、フランス語だったか?」
「えいご? ふらんすご?」
 ストゥディが目を大きく広げている。コンシリアも同じ表情だ。見ればレギナも同じような顔をしていた。
「読めるのですかそれが?」
「読めるかなぁ。なんとなくわかる程度か」



無印良賓!_349 

「まさに丸投げですわね」
 レギナが笑う。幾分あきれているようでもあるが、侮蔑の色はない。
「素人にあれこれと無責任に口出しされるよりはマシであろう?」
 そう嘯く私にもう一度レギナが笑う。ストゥディも笑みを浮かべているがこちらはあまり意味が分かってないというか、気にしていない風だ。そしてコンシリアも笑みを浮かべてはいるがこちらは少し引きつっていた。
「安心しろ、今に慣れる」
 そう言って私はコンシリアに笑いかけるが、コンシリアの笑みがさらに引きつるにとどまった。
 そうやって話しているうちに、おそらくは目的の場所についたのだろう、コンシリアが足を止める。
他の場所よりも書架の背が低い。そして並ぶのは大きくて丈夫そうな本。
「こちらになります」



無印良賓!_348 

「歯がゆい?」
 聞き返す私にストゥディが頷く。
「だって、新しいことを発見してもなかなか公表させてくれないんですよ!」
「なるほど。そっちか」
「笑い事じゃないですよぅ!」
 思わず笑ってしまう私に対し、ストゥディは不満の声を上げる。
「あたしの研究で少しでもみんなが豊かになればいいなってがんばってるのに!」
「ストゥディの研究は確かに有意義ではあるのですが、一歩間違えると軍事的に転用可能なものが多いのです。そこはやむおえないと諦めなさい」
「わかってはいるのですが」
 レギナが窘めるとストゥディはしゅんとなる。
「便利なものは常に危険と隣り合わせだからな。そこいらへんを何とかするのもそちたちの仕事となろう」



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