(掌編)赤い目が
彼女は、どこにでもいる地味な女の子。教室の隅っこ、目立つことがない。後ろで一つに結んだ黒く長い髪は、綺麗かもしれないけれど。それさえも湿っぽくて、暗いって思えてしまう。
だから、忘れ物を取りに教室に駆け込んだ今、そこに居た人物が、彼女であるとは気付かなかった。
教室の後ろに立っていた彼女とは別の気配を感じて、視線を教室の前方に向ける。影のようなものが、教卓の辺りに揺らめいていた。
「何」
それは震えあがるように形を変えて、大きく伸びた。私を見た、ように思えた。
「え」
その瞬間、私の前に女生徒が跳びこんできた。彼女は私を背中にかばうと、前方に両手をかざした。白い光が私達を包み込んだ。大きな影は私達の方へと迫ってくる。彼女の両掌から発せられている光が眩しさを増す。光にのしかかってくる影を押し飛ばそうとするかのように、領域を広げていく。
「何なのこれ!」
「黙ってて!」
彼女が叫ぶと、光は一層強くなった。その勢いに推された影はちりぢりと破れて、消えた。
私を振り返り見た彼女の、赤い目が、美しかった。
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