(掌編)人ならば
「ねえ、起きて」
声が聞こえる。低めだけど甘い、男の人の声。え? 男? 驚いて跳び起きると、笑い声が聞こえた。恐る恐る横を見る。
「やっと起きた」
明るい茶色の柔らかそうな髪と、焦げ茶の吊り目。大きめの口が微笑んでいる。
「だだだだ誰?!」
「やだなあ、僕だよ」
「そそそんなイケメンの知り合いはいない!」
慌てて彼から距離を取ろうとして、布団を掴んで引き寄せる。しかし、布団の裾を、彼がしっかりと握っている。
「僕、イケメンなんだ。嬉しいなあ」
「へ?」
間の抜けた声を出して、彼を見る。茶色い……。
「チャイだよ。君の飼い猫!」
何事! チャイが擬人化している。これは夢? 夢でしかない。起きなきゃ!
……いや? 夢ならば、しばらくそれを楽しんでも、罰は当たらないのでは? だってこんな……理想通りのイケメンと至近距離なんてこと、ないから! 私はチャイの頭に手を伸ばした。ふわふわ……。
そう思った瞬間に、それは私から離れた。
隣に寝ていた猫のチャイが、ごろりとあちらを向いた。短い夢だった。
#わんあわ #pixiv今日のお題 #擬人化 #小説
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