街を歩いていたら、出店があった。白いテーブルの上に小さな機械や工具と、きらりと光る物がある。それは、シンプルな金と銀の指輪。僕らは二人とも、その輝きに惹かれて、足を止めた。
「かわいい……」
つぶやいた雪に、お店の人らしき女性が微笑みかける。
「オリジナルリング、すぐお作りできますよ」
そう言って、丸や四角など、様々な指輪を指してみせた。指輪を見る雪の目がキラキラしているように思えた。
「作ってもらおうか?」
「えっ」
「どれがいい? 雪は銀の方が似合うかなあ」
「でも私、指太いし」
「太くないよ」
「サイズ、お客様に合わせてお作りしますので」
「ね」
店員さんの勧誘に乗って、僕は雪の左手を取った。
「ま、待って、左手って!」
「え?」
雪の手を取ったまま、僕は彼女の戸惑いの理由に気付けずにいた。
「あっ、でも薬指じゃなければ」
「あ」
左手の薬指に指輪だなんて。僕は大それた事をしようとしてしまった。
「じゃあ、他の指に……」
でもいつか、左手の薬指に、僕が、なんて……。
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