蹴られて折られるだけの軽いリョナ
「っあ゛ァッ……!!」
ぐ、と堅い爪先が鳩尾へめり込んだ。
肋骨にはヒビすら入れず、筋肉には掠めもしない、確実に痛みだけを与える精緻な蹴りには賞賛すら覚える、などと他人事のように思った。
長い足が再度蹴り飛ばすままに吹き飛び、受け身も取れず強かに背を打ち付ける。衝撃に空気が肺から押し出され、苦痛を堪えようと緊張していた全身は一気に弛緩し崩れ落ちた。
「え゛っゥ、ッ、ゲホッげひゅ、ゥ」
当然足らなくなった空気を反射的に取り込もうとして失敗し巻き込んだ唾液にえづく。胃の奥からつんと饐えた臭いが遡り余計に咽せる。ちっとも息が吸えない。
空腹でいて助かった。でなければきっと吐瀉物で今以上の無様を晒していたに違いない。
現実逃避じみた思考の端でかつかつ、と響く踵の音を捉えた、一瞬後には長い指が襟を鷲掴みぐにゃぐにゃの身体を持ち上げる。冷え切った瞳は冷徹を通り越し無が浮かんでいるように見えた。
「利き手はどちらだ」
「…ぃ、だり」
薄い唇が紡いだ問いの意味を考える間もなく吐息のような答えを返すと、襟首は開放され右腕に思いのほか熱を湛えた両手が添えられる。
ばき、ん。
創作鯖化 FGO時空 宥良と三臨ジュナオ
「あ……あるじゅな、おるた、さん」 自身の名を呼ばれ草陰を覗くと、果たして探しびとは満身創痍であった。 わざわざ来てくれたのか、と微笑う声はか細く掠れている。 吹き飛んだ際にワイバーンの爪で引っ掛けられたらしい脇腹は赤く染まり、ぽっかりとある筈のない空洞が生まれていた。 現界を保っていることが奇跡のような有様だが、それでも血溜まりは傷口に比して小さい。特異な鋼の肉体は辛うじてこれ以上の流血を防いではいるようだ。 「……急いで戻りましょう」 損傷の修復に長けたその身をもってしても未だ完治が叶わないならば、相当に危険な状態のはずである。傷に直接触れぬよう気を配りながら常より軽い体を抱えあげ——そうして気づいたが左肘から下も吹き飛ばされ、針金となり伸ばされた血肉が蠢いていた——なるべく振動を与えぬよう静かに合流地点座標を目指す。 「め、わく、かッ……げほ、もうしわけ、ない」 血にむせながら途切れ途切れに謝意を口にする宥良の背をそっと尾で撫ぜてやる。 「謝罪など要りません。マスターとてその言葉が聞きたいわけではないでしょうから」
創作鯖化 FGO時空 宥良とマスター
「きみは自分を人間ではないというけれど、それでも人のため戦ってくれるのはなぜ?」
「……人でなければいけないだろうか。俺が人でないものだと自身を誇ることと、俺がヒトを想うことは何も矛盾しない。人でなければヒトを愛せず、共に在ることはできないなんて誰が決めたんだ? 人間か? だとしたらあまりにも傲慢に過ぎる」
「けれどきみはかつて人間に虐げられたんだろ? 人によって大切なものを失ったとも聞いた。それでも、ヒトが好き?」
「外れたものを拒絶したがるのは人に限った話じゃないだろう。どんな生き物であれ自らと違ったものは受け入れ難いものだ。だから俺がヒトを愛さない理由にはならないよ。……その点、あなたはちょっと変わり者かもしれないが、まあそこは別の話だ」
「きみは、優しいんだね」
「自分勝手なだけだと思っていたんだが」
「そうかな。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、なんて言うじゃないか。人間を愛さずとも、大切に想うヒトのために、人を守る戦いへ身を投じてくれるきみは、やっぱり優しいよ」
「結局は俺のためだ」
「それでも、ありがとう。これからもよろしくね」
「……ああ」
ロビンソンコンビ なのに殆どいない
マスター曰く、これは彼の故郷にある習慣なのだという。
年の数だけ炒った大豆を食べることで、厄除けと無病息災を祈願するのだとか。
しかし英霊の年齢を定義することは難しく、外観と精神が合致しない者も多い。そこで誰が言い出したか「享年の数だけ」ということにされていた。
言い出しっぺのマスターやマシュは少し申し訳なさそうな顔をしていたが、存外悲惨な末路を辿っていようとそれを話題にすることに抵抗はないもんだぜ、と青い槍兵に背を叩かれていた。実際事実ではある。死によって始まるのが英霊という概念だ。個人差はあるにせよ、人々が想像するほど僕らはその話題への忌避感はない。
というわけで、皆各々の死した年と同じ数だけの豆を皿の上に並べている。一部のサーヴァント、例えば神霊などは享年という定義が無かったりするので、ざっくりと存在していた年代から現在までと概算され絶句するような量を用意され顔を青くしていたようだ。どうやら救済措置も取られたようだが詳しくはわからない。
僕は67粒。上には上がいる数だ。それでも多く感じるのは、僕の隣に座る彼の皿と比べてしまったせいだろうか。
創作鯖化
今野宥良(殺) 第一段階
コンセプトは「性別・国籍を曖昧に」「アレンジ少なめの和装」辺り
鯖化なので服装や髪色は実際の設定からあえて変えてます https://pawoo.net/media/60eJSamxfLuvn-Pxyhs
創作鯖化メモいろいろ3
変更
戌亥蕉太(騎):対魔力B→C
今野宥良(殺):筋力C→D 対人宝具→対人宝具(自身)
(FGOの場合)
宥良は再臨で脱げてくタイプ
曰く「纏うものが少ないほど全身での宝具発動がしやすい」から
段々髪と瞳の色も褪せて「金属の色」になっていく
狂のときだけ髪も伸びる 霊基に大きく影響を及ぼさない範囲でより体積を増し攻撃手段を増やすため
蕉太は再臨で着込む(?)タイプ
神に近づく自身を押さえ込むように拘束具じみた装飾が足される
一臨で襟足が伸び、顔に少しずつ隈取が増える
手足が三臨で獣に近づき、口枷が付く
犬の攻撃手段は主に口 あえて封じ力を抑えている
呪物としての狗神と「戌亥」は本来別物だがルーツではあり、また英霊となる時点でその伝承も取り込まれている
そのせいか蕉太には「首を切られること」への本能的忌避と執着が同時に存在し、また弱点にもなり得る
通常の聖杯戦争で殺がサンソン先生だと多分相性最悪
蕉太に術適性が無いのは本人が呪術とかてんでポンコツなせい
「戌亥の戌神」自体には適性有
宥良の体はワンランク上の真名解放前宝具なら無傷でいられる強度
ロビンソンコンビ習作 温泉
湯船に沈み、ぶくぶくと泡を吐き出す。
行儀が悪い、と常なら指摘してくるだろう処刑人もまた、同じくとっぷりと沈み込んでいた。
さぞお疲れなのだろう。顔色こそ湯の熱にあてられ見られる色をしているが、その表情にはいつも以上に覇気がない。
人理修復から間も無く、亜種特異点の一つをやっと制したばかりであるこのカルデアには戦力がまだまだ乏しい。それなりに戦える者が五基揃う弓陣営などかなり恵まれているほうで、大概は二人、狂などは未だアステリオス一基だ。
殺は三基。とはいえ、ほぼ狂と同等の駆り出され方をしているジキルを一角に据えているため実質二基で回しているに等しく、サンソンも随分と刃を振るう羽目になっているようだった。
疲労回復のため、と用意された温泉のはずだが、疲労など何処吹く風と騒動を起こす者はいつも通り後を絶えず、気を回しがちなこの男は余計に疲れを背負い込んでいるのではと邪推する。
普段些細なことでも一々目ざといサンソンが、最早その程度指摘できない、とばかりに黙って自分の横で沈んでいるのだからほぼ事実であるのだろう。
……にしても静かすぎやしないか。
創作鯖化
真名を知り、自分なりに色々と調べたのち、ふと彼に尋ねてみたことがある。
「ねえ、ライダー」
呼びかけた背中は彼がくるりと回ったことで見えなくなり、しかし機嫌がいいのか、豊かな毛並みの尾は隠れることなくゆらゆら揺れながら存在を主張していた。
常に周囲を伺う犬耳は、今は此方に集中してくれているのか正面を向いている。
半月を思わせる口元から覗く牙の輝きを見つめつつ私は口を開いた。
「狗神の成り立ちについて調べてたんだけど、ライダーって、」
ぴり、と空気が張り詰めた気がした。
彼の耳も、尾も、表情すらも、先刻から何一つ変わらないというのに。身を捩ればその瞬間肌が裂かれてしまうような錯覚に陥り二の句が告げない。
その場に縫い止められた私を観察する、針のような瞳孔が天辺から爪先まで滑り落ちていく。
やがて視線が交差して、ライダーの瞼が三日月の如く吊り上がった。
「マスター。オレは、"騎兵"の"英霊"だ。そうある為に、枷を付けている。今お前がしようとしたことは、決して外してはならぬ口輪の錠前に鍵を差し込む行為なんだよ。……その鍵を捻るのは、お勧めしないぜ。オレの為にも、マスターの為にもさ」
Twitter→ryu_or_yanagi