外は曇天、寒々しい灰色は雪雲のそれだが、ここ二課棟は都心が雪でも雨になる場所だ。このまま泣き出さないでほしいが、場合によってはぬかるんだ駐車場を凍えながら歩かなければならない。
「こんな日は熱燗だな」
ギッと椅子を鳴らしながら後藤がそうひとりごちると、「待機が終わったら好きなだけ飲んでくれば?」と同僚が突っ込みを入れてくる。
「しのぶさんも一緒にどう? おでんがうまい店見つけてさ。ちくわぶが最高なのよ」
ちくわぶ、のところでしのぶの耳がぴくっと動いた。
「興味あるでしょ?」
「それほどでも」
「ねえ、せっかくだからさ、今度一緒にいかない?」
「なにがせっかくなのかがわからないのだけど」
「それもそうだね」はは、と後藤は小さく笑ったあともう一度尋ねた。「ねえ、どう?」
「考えとくわ」
しのぶはつっけんどんにそう答えたが、しっぽはとても嬉しそうにぴんと立った。
後藤はそのことをあえて指摘せずに、しっぽをタンタンと叩きながら、しのぶが素直に頷く言葉を探し出す。
俺たち、しっぽだけは素直だっていうのに、なんで駆け引きなんかしているんだろうね。
「ねえ、何か企んでるでしょ」
しのぶの言葉に後藤はすっとぼけて「別に?」と答えた。確かにいま探っていることはある、場合によっては課長に掛け合って準備をしなければならないことが。第一小隊に一時的とはいえ来た新型機、年末の忌々しい事件、なにか、巻き込まれそうな予感がする。
「後藤さん」
「なんでしょう」
「しっぽが、とても楽しそうよ」
言われて後藤は耳をしゅんと垂らした。自分がネコ科なことに文句はないが、たまにしっぽが自分の言うことを聞かないのは困った物だ。特にしのぶの前では、こいつは妙に素直にぶんぶんと揺れる。
「まあ、話せるときになったら話すからさ」
仕方ないから正直に言うと、しのぶは満足したとばかりにシャムらしい美しい尻尾をピンと立てた。
「全く、態度もそうやってしっぽと同じように素直なら、私の苦労も半減するのだけど」
「それはお互い様でしょ」
「なにか言った?」
「なにも」
後藤はしれっと返事をした。
「ならいいけど」
しのぶもそれ以上追求する気もないらしく、すぐ手元の書類に目を落とす。
そうしてしばらく、二人はしっぽを垂らしたまま淡々と仕事をこなしていった。
また上級エリートきたー、ので闇鍋求人ナイツしてきたのですが、一年弱だった間隔が半年、三か月、そして二週間と縮まってきているので、これは来週、同時に二個、また二週間、三が月、半年…ときれいなy=x^2の反比例グラフを描いている可能性がある
映画『金の国 水の国』感想、座談会で心がすっと冷めたので、厳しめなところから
映像芸術としての映画化いうより、少女漫画の映画化、という方が厳密にいえば正しい脚本・監督で、原作に忠実なタイミングでモノローグが入るんですよね。ただ映像は漫画よりもさらに情報が増えるので、モノローグはもうちょっと削れたんじゃないかなあ、というのがずっとあった。シーンでも丁寧に、あるいは比喩として心境説明を重ねていってる演出だったので、結果として余分かなあ、と感じてしまい。
帰ってきてすぐ原作読み返して、こっちは引っかからずにすいすいと行くので、漫画としてテンポを作るモノローグと、アニメとしてテンポの良いモノローグって違うなあというのが率直なところです。
少女漫画としての「想像させる心境」と「説明する心境」の前者のよさはやはり原作の方が豊富だなあと思いました。
本当に好みの問題だと思うんだけどね。
あと、最後の展開で「いつサーナが合流するか」は明確に変えているんだけど。これは少女漫画の命題であろう「ボーイミーツガール」が強調されたものになっていて、私は原作の展開のほうが好きだけどアニメの方が好きな人もいるだろうし、好み分かれる改変だなあと思った
で、『金の国 水の国』を見てきたわけですが、ネタバレでないと判断して書くと、エンドロールが出て「おしまい」って出たあとの、主演二人と監督の座談会って全上映に付いてきたのかな。
私は「おしまい」と銘打ったらおしまいであるべきと思うのと、リピーターほしいんだろうが物語の余韻もなにもぶったぎるタイミングでそれが投入されたので、かなり醒めてしまった…文字通りの蛇足…余分…
アークナイツ布教してきた友人にも「ぶっちゃけここまではまってくれるとは思わなかった」と言われたし自分でもびっくりしてるんだけど、民族や病気のスティグマ化と差別、貧富と階級をストレートに描いて、かつベースはポストアポカリプスSFかつ中華幻想譚かつ欧州ファンタジーという好きな要素しかないので、プレイのコツが掴めれば延々とやっちゃいますよぬ…ゲーム自体も面白いし。詰め将棋感ある。
小説書きなので絵は一切流れません。
pixivには昔の作品のサルベージとたまに新作が載ります。ジャンルはパトレイバー(主に隊長たち)、有栖川(作家と准教授)。過去作でSPN(兄弟)。