16歳⑦
たぶん、俺が6歳の時
16歳のあいつのことが好きで好きで
「おねえちゃん!おねえちゃん!」
って後を追っていた気がする
憧れだったのか、
例えば、美人の幼稚園の先生に抱く感情に似ていたと思う
あいつも、笑顔で応えてくれていたから
甘えきっていた
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その気持ちに
変化が起きたのは中学に上がった頃
憧れが、
いつしか、恋心になった…
「悠一くんも頑張ってね」
あいつはそう言って、ここを離れた
その時、初めて、喪失感を覚えた
「行かないで」
って何度も思った。
今思うと女々しくて笑えるけど、
あの時に、確信した。
「この人を恋人にしたい」って。
でも、10歳も離れたこんなガキを、相手するとは思えなかったし、
都会でいい男でも捕まえてくるだろうと、半ば諦めてはいた。
なのに、
「彼女できた?」
あほ面で聞いてくるからマジでイラついた
そういう自分だって、彼氏も旦那もいないくせに、余裕ぶって、弟感覚で聞いてきやがって…
16歳でも男だってことを、
分からせてやろうって
泣かれてもいいって思ったのに
「かっこ悪すぎ」
大失敗。
最悪の告白だ。
16歳⑥
「じょ、冗談…でしょ?」
「…」
「ねえ…」
「…」
「笑えないよ…!」
思わず大声を出してしまった
この家には、私と悠一くんだけ
「…」
「悠一、くん…」
誰にも、聞こえない
「…好きだよ、姉ちゃん」
「!」
悠一くんは私を押し倒したまま、
私をずっと見下ろして、
弱々しく、だけどはっきりとそう言った
「ずっと、あんただけだ」
「…っ」
「告白もされた、誘われたこともある」
「…」
「けど、俺はあんたがいい」
悠一くんはそう言うと、また唇と唇の距離を縮め…
「待って!」
「…」
その唇を私を両手で抑え込んだ
「…わ、私の気持ちは無視…?」
「…」
「そ、そういう所は子どもだよね」
「……あ?」
悠一くんは身体を起こして、
私を更に睨みつけた
「…」
「…ほら、何も言えないじゃない」
「…うるせえ」
悠一くんは、俯いた
その耳だけは真っ赤だった
「少し時間、ちょうだい」
「…」
「まだこっちにいるから…」
「…分かった」
「また、話そう?」
「…」
少し不満そうだったけど、
悠一くんはこくんと頷いてくれた
16歳。
まだ、“早い”気がした_
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