むつぎはじめ @mutsugi

「亮太君、今日初めて名前で呼んでくれたね」
しばらくして、先ほどの言葉の通り離れた木陰で飲み物を飲んで一息ついていると、りな――遠山莉奈――は少年――土方亮太――にそう言ってほほ笑んだ。
「いや、だって、そう言わないと不自然じゃないかって……」
振り返るととりわけ彼女の名前を呼んだ時だけ声が震えていたような気がする。
そして、「おねえちゃん」とでも呼べば、姉弟で来ていることにして逃げの手を打てたのでは? と少年は気付いた。
「あっ、しくったぁ……」
亮太は、顔が真っ赤に熱くなっていることを自覚した。
「ねえ、彼氏くん……だってさ」
莉奈がそうつぶやく。
膝に顔を寄せ、亮太を、ほんの少しだけ下から眺める。
(ああ、そういえば莉奈さんを見下ろしたこと、一度もないや)
「じゃあ、恋人になろうか」
湿った唇が、そう言葉を紡ぐ。そして、莉奈は亮太へと近づき……

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