人に害をなす鬼がいると、噂で聞いた。
流浪の旅をしながら道場破りや用心棒などをして日銭を稼いでいる俺は、その鬼退治をしようと決意した。落ちこぼれの侍である俺が成り上がるには、手柄を立てないといけないからだ。
よく出没すると言われる岩山に登ってみた。見渡す限り、岩だらけだ。いかにもいそうではないか。
さらに登っていくと山の頂上からの湧き水なのか、小川が流れていた。見るととても澄んでいて飲めそうだ。喉が渇いた俺は屈んで、水をすくってみた。
冷たい。
ひと口飲んでみようとした時。
背後に気配を感じ、刀の柄に手を伸ばしながら素早く振り返る。
そこには年若い女子がいた。
「あ…」
女子は驚いた顔で俺を凝視する。俺も同じように女子の顔を見つめた。
こんな所に人が、しかも女子がいるとは思わなんだ。
「…そ、そなたは?」
声をかけた。女子はハッとしてお辞儀をした。
「わ、私は華涼(かりょう)と申します。この近くに住んでいるものです」
それを聞いて、俺は身構えた。もしや、こやつが鬼か…?
「…なぜ、ここに住んでいる?」
「それは…」

少し言いづらそうに顔を伏せる。いよいよもって怪しい。
いつでも引き抜けるように、ゆっくりと刀に手をかける。
その時、全身の毛が逆立つほどの殺気を感じた。本能的に飛び退く。と、同時に石つぶてが飛んできた。よく見ると飛んできた石つぶてが砂利を貫通して地面にめり込んでいる。あんなものを食らったら一瞬でお陀仏だ。
そして、これだけの力を出せるのは鬼しかいない。
「…俺の嫁に近づくな、侍」
いつの間にか華涼と言った女子のそばに、小麦色の髪をした男が立っていた。ボサボサの髪に隠れて見えにくいが、角がある。
こいつが鬼か!
「人に害をなす鬼は貴様だな!成敗する!」
「俺を退治しようと来たのか…久々だな。相手しよう」
俺が刀を抜き、鬼が手をかざすように身構える。
張り詰めた空気が辺りを包んだ。
「だ、ダメです!」
その空気を破くように割って入った者がいる。
華涼だ。
「華涼!危ないから俺の後ろにいろ!!」
鬼が叫ぶ。だが、俺が目玉が飛び出すほど驚いたのはこのあとだ。

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なんと華涼が鬼を庇うように、俺と向き合ったのだ。
「紅蓮様を殺すなら、先に私を殺してください!」
「華涼!!」
「紅蓮様は人に害をなす鬼などではありません!とても優しい人です!だから…!」
「…華涼さん…と言ったかな?」
俺は静かに問いかけた。華涼さんは口をつぐんだ。
「あんた、騙されてるんだよ。こいつら鬼はそうやって警戒心を解いて人に近づき…」
俺は一呼吸してから言った。
「喰うんだよ」
華涼さんは顔をしかめた。それはどこか哀しげに見えた。
「……私は、紅蓮様に喰われるなら、それでもいいです…」
華涼さんは絞り出すように声を吐き出す。
「紅蓮様は私を「嫁」にしてくれると仰ってくださった。私に「夫」という家族ができたんです。物心ついた時から家族のいない私にできた、唯一の家族なんです…だから、私から家族を奪わないで…」
「華涼さん…だから、そうやって鬼は…」
「ごちゃごちゃうるせえ!」
鬼がまた石を投げてきた。至近距離の投石は避けるだけで精一杯だ。

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「華涼は俺の大切な「嫁」だ!逃がす気も、喰う気もねぇ!」
華涼さんを抱きしめる鬼。華涼さんはうっすらと頬を染める。
「どうしても、手放す気はないのか?」
「あるか、そんなもん」
俺の問いに鬼が吐き捨てる。

ここまでです。
めっちゃ長くなりました(›´ω`‹ )

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@baroque203 新キャラ登場ですな!
紅蓮と華涼の二人の絆が回を重ねるごとに深まっていく…(´∀`*)

@mastimaw4 また新しいキャラが登場しましたね(笑)
鬼の話は、ワンドロで設定と話が同時進行で固まっていくようです( ̄▽ ̄;)w

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Pawoo

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