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いちさに 神隠し 

「一期、本当にこっちで合ってるの?」
茹だるような暑さから隔離されたような涼しい森の中を、一期に手を引かれるまま歩く。
行き先は、知らない。ただ、一期が見つけたのだという綺麗な場所を目指して足を動かしていた。
「ええ。もう少しで着きますよ。」
そう言いながら、一期は歩くスピードを緩めず、さくさくと道にびっしりと生えた草を踏みながら先へ、先へと進んでいく。
……どうしてだろう。手から伝わる温度も、声も、何も変わりはしないのにいつもの一期とは違うように感じてしまう。それは、ほんの些細な違和感で、それでいて喉に小骨が刺さったように気になってしまう。けれど、その違和感の招待は私には分からなかった。
「……ああ、見えました。あちらです。この川を渡れば、すぐですよ。」
一期に促されるまま、その先を見れば流れの緩やかな川がそこにはあった。森の奥深くにあるにしては少し派手な赤い橋の前で、一期は繋いでいた手を離した。
「立派な橋だね。」
「ええ。いい目印でしょう?この先が、お連れしたい場所ですよ。」
参りましょう。そう言われて橋へと一歩踏み出す。
何故か、2度と戻れない。そんな気がした。

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