【SINoALICE 赤ずきん】
「なんで?どうして?」
恐怖に顔を歪めて一歩後退る。その足元には仲間の死体が横たわっていた。
「助けてって文にはあったのに。だから、勇気を振り絞って助けに来たのに。あなたは、お友だちだからっ」
最期は絶叫に近い言葉を投げかけ、問う。
「そうだねぇ。来てくれるって信じてたよ。おともだちだもんっ。誰もいないここなら、どんなに大きな声で叫んでも、誰にも聞こえない。だから遊ぼう?思いっ切り遊ぼう!遊び道具はいっぱいあるよっ」
「剣で手足を切り刻んで、鎚で頭を叩き潰して、ナイフでお腹を裂いて温かな臓腑をこねくり回そう!!楽しいよ?楽しいよっ!絶対絶対楽しいよ!!さぁ、あたしと遊ぼう!」
そう言って、自分の躰よりも大きな剣を軽々と掴む赤ずきんを見て、ナイトメアの娘は、もう家には帰れない、と瞳を閉じた。
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敷波が夏風邪を拗らせて伏せっていた。
見舞いと思い、駆逐艦寮の玄関をくぐった時には豪雨だったけれど、それが雹に変わったのか、窓ガラスを叩く音が硬い。
「あれを、グラスいっぱい掬って食べたら、熱も下がるかな?」
苦しそうな息の間に、敷波はそんなことを言って、少し笑う。
「俺は取ってきてやらないからな。欲しけりゃ、早く元気になって自分で掬ってこい」
窓の外の音を見つめたまま言うと、くすっと、溜息のような笑みが返ってきた。
「こんな時ぐらい、少しは甘やかしてよぉ。けちんぼなんだからっ」
「俺がケチかどうかは、この間宮特製バニラアイスを食べてから言ってみろ」
アイスのカップを額に添えると、敷波は気持ちよさそうに吐息をついて、
「そのアイス、勿論食べさせてくれるんだよね?」
例えようのない笑顔でそう言った。
その夜龍驤と鳳翔のふたりは、少し蒸し暑いからと、縁側にいた。
柱の一本に背を預けて座る龍驤に、隣に座った鳳翔は、枝垂れるように躰を寄せていた。
南の空には、天の川がうっすらと見えていたけれど、水平線に近づくにつれ、港の灯りの中へと消えていた。
ふと、鳳翔が思い出したように言葉を紡いだ。
「駆逐艦の子たちが、今夜は流星群観るってはしゃいでましたね」
その楽しそうな声を思い出して、鳳翔はくすりと笑う。
「あはは。何人起きてられるんやろな?」
流れ星が多く流れるのは、どうしても深夜になってしまう。
眠気と闘いながら、なんとか頑張る駆逐艦の子たちを想像して、龍驤は面白そうに笑った。
「くすっ。龍驤さんは起きてられるんですか?」
時には、”見かけない駆逐艦の艦娘”だとからかわれる龍驤を、鳳翔はちゃかした。
「そうやなぁ。起きてられるっていうか、鳳翔さんが寝かしてくれひんとちゃう?」
龍驤の返答は、彼女らしい揶揄と蠱惑に満ちたものだった。
「もう、莫迦っ。……本当に、寝かせませんからねっ」
鳳翔は艶やかに言葉を返し、てのひらを龍驤のほほに添わせて、甘くくちづけた。
おしまい
哨戒任務から帰投するのは、いつもこんな時間。
誰彼時。夕闇に、人の顔が朧にくすんでいく時間。
横須賀軍港の灯台や標識ブイに灯が入り、明滅する灯りが艦娘を誘導してくれる。
でもそれよりも、まだ遠い桟橋の上に見える、白い光が艦娘(わたしたち)の目標なんだ。
自ら光ることもないのに、それはわたしたちの目にははっきりと捉えることができる。
濃くなっていく夜の闇に凛として在る、白。
疲れた身体も、傷ついた手足も、苦にならなくなる。
項垂れた面を上げて、その白を見ていたくなる。
ああ、母港に帰ってきたと、感じる瞬間なの。
それでも、速力を上げたりしない。どんなに心が急いても。
みんな同じ気持ちだから、艦隊を整えて、見栄えを良くして。微速前進、よーそろっ!
桟橋へ上がれば、きっとこんな声が聞こえてくる。
「おかえり、みんな。よく無事で帰ってきてくれた。ありがとうっ」
わたしたちには、何よりの労いの言葉。
みんな、嬉しくてたまらなくなる。
いち日の苦労が報われる。
大好きだよ、提督/司令官/てーとく/てーとくさん/司令官さん/しれー/きみ/ご主人様/クソ提督っ。
艦これメインの似非ものかきっす