ちょっと飲ませ過ぎたかな。そう思った頃にはもう遅かった。ぐでんぐでんに酔っ払った可愛いかわいい兎ちゃんは、それでも僕は酔ってませんみたいな顔をして、少し上体を揺らしながら正座して正面に座っている。そもそもお前シラフで正座とかしねーだろーが。などと突っ込んだら負けだ。お前もうやめておけ。手に持ったグラスを取り上げる。呂律の回らない舌で抗議の声が上がるが無視をする。追い立てる様にして取り敢えず歯だけは磨かせて布団に押し込んだ、その時だ。「こてつさん」それまでぶーぶーと文句を垂れるだけだったあいつが、ふと真顔になって、とても大切な事に気が付きました とでも言った様子で俺を呼んだ。どうした?それまで小さな子供をあやす様にしていたのを引っ込めて先を促す。美しい翠の瞳がじっとこちらを見つめる。「鮟鱇に灯るあかり。あれこそが、この星の最後の希望なんです」お綺麗なハンサムの口から出た発言はやはり酔っ払いであった。ハイハイと金色の猫っ毛をぐしゃぐしゃとかき回す。その下から、ほんとうなんです と小さく声がして、やがてそれは規則

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@komoridonburi 的な寝息になった。ほんとうなんです。今しがたの酔っ払いの戯言を思い返して、その馬鹿馬鹿しさと可愛いらしさに小さくわらう。その夜、夢を見た。まっくらな深海の底は、黒と言うより藍色で、まるで初夏の夜空の様だった。小さなプランクトンみたいなものがそこかしこで光りながら浮かぶ。その中で鮟鱇を持ったあいつが立っていた。鮟鱇の灯りはほんのりと、けれどやさしく辺りを照らしていて、なるほど、確かにこれは最後の希望かもしれないと夢現にぼんやり思ったのを覚えている。

鮟鱇に灯るあかりがこの星の最後の希望です  ほんとうです  (筒井宏之 / 佐賀新聞読者文芸欄 )

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