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開園と同時にきみはライオンの檻の前に駆け出した。二キロ先でも聞こえると言うライオンの遠吠え。朝一番でないと聞けないんだ。檻にかじりつきながら瞳はライオンに向けたまま、説明してくれる。夜も聞こえるよ。サバンナでテントの中、トランプをしながら聞いたことがある。襲われたら死ぬかな、と思ったね。ゆっくりと足を組む。きみの瞳は僕に釘付けになっていた。

「母ちゃんは、こないの?」ペンギンのプールを取り囲んだ鉄柵に顎を乗せる様にして、ぽつりと少年がつぶやいた。「寂しい?」「ううん、でも」「もしかして、捨てられたんじゃないかと思った?」言い淀んだ言葉を引き取れば、少し伸びた黒い髪がそっと項垂れる。ペンギンが甲高く一声鳴いた。「君は、いま十歳だっけ?ヒーローは好き?」尋ねると、こくりとちいさな頭が頷く。「じゃあ、こっそりひみつの話を教えてあげよう。実は君はこの街でヒーローをやっている。そこで能力者の力を浴びて、年が若返ってしまったんだ」内緒だよ。人差し指を立てて冗談めかして言えば「だったらいいなあ」と力無く微笑む。「おや、疑ってる?じゃあもう一つ教えてあげる。君には相棒が居たんだ。君と全く同じ能力を持つパートナーがね。彼も君と一緒に能力者の力を浴びた。そして君が若返ったぶんの年を彼が受け取ってしまったんだ」大体三十年分くらいかな。少し節くれだった掌で顎を撫でてみせる。「おじさんが?」興味を惹かれた風に少年がこちらを見る。「信じるかい?」少年の隣に凭れかかりながら、ちいさく微笑む。

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これ、一人称ばにーさんのつもりだったけど、まさかのロイズさんだったらちょっとおもしろいなって今さら思ってしまった。みすでぃれくしょん。

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