ケンタシノリ @kenta_konomi

『左利きの次郎兵衛』第2話 宿場町にうごめく闇(その2-4)

「私の名前はおつる。もし何かあったら、私のほうへ言ってくださいな」
 おつるは次郎兵衛にそう言うと、すぐに土間へ下りて晩ご飯に取り掛かる準備に入った。
 そのとき、突如として柄の悪そうな男たちが徒党を組んで亀島屋へ乗り込んできた。その男たちは宿に入るなり、いきなりわめき散らすように怒鳴り声を上げてきた。
「おい! 借金をさっさと返さんかい!」
「亀蔵はどこだ! 隠れてないで早く出てこい!」
 あまりにも怖そうな男たちの顔つきに、宿泊者たちは声を出そうにも出せない様子である。それは、男たちのそばにいるおつるも同じである。
 その間も、男たちの怒声はやむことはなかった。
「早く借金を返せ! 借金を返せ!」
 すると、宿の奥のほうから亀蔵が男たちの前へやってきた。男たちを見た途端、亀蔵は血の気が引くように青ざめていった。
「すいませんけど……。こんなところで怒鳴り声を上げたら、お客さんが怖がるので……」
「そんなに言うなら、今すぐその場で借金を返せ!」

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