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ケンタシノリ @kenta_konomi

『左利きの次郎兵衛』第2話 宿場町にうごめく闇(その2-3)

 次郎兵衛が広い板の間に上がると、この宿の女将さんが目の前にやってきた。
「いらっしゃいませ。亀島屋へようこそ」
「わしは次郎兵衛という者だ。ほんの気持ちだけど、晩ご飯にみんなで召し上がっていただければ」
 次郎兵衛は挨拶もそこそこに、女将さんにある物を手渡した。それは、矢掛宿へ向かう最中に小田川で釣ってきた川魚の数々である。
 これらの川魚を見て、女将さんは目を輝かせている。その地方で取れた地魚が晩ご飯に出れば、旅の楽しみがまた1つ増えるものである。
「アユやイワナがこれだけあれば、みんなに出す晩ご飯の見栄えが良くなるわ。本当にありがとうね」
「そんなにお礼を言わなくても……。この宿に泊まる以上、他の人のために尽くすのは当然のことなので」
 ここに限らず、木賃宿では朝晩に食べる食事の材料は宿泊者が持ち込むのが普通である。もちろん、その分だけ宿代が旅籠と比べてはるかに安いのは言うまでもない。

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