ケンタシノリ @kenta_konomi

夜暗の忍 第5話(その5-3)

「この屋敷の当主の許しがなかったら、これほど大掛かりな博打はできないだろうからなあ」
 痛いところを突かれた博徒連中は、怒りをこらえるのが精一杯である。
「木兵衛、そろそろ帰るぞ」
 木兵衛と清蔵は、博打で買った儲けを受け取ることなくその場から歩きながら去った。博徒の男たちは、拳を握りながらいら立ちを隠せない様子である。
「あいつら、今度会ったら血の海にしてやるからな……」
 博徒の1人が怒りをぶちまけていると、後ろから冷静な口ぶりで話す男が現れた。
「ここにいる連中は、相変わらず血の気の多いなあ」
「誰かと思えば、律吾か。何をしにきたんだ」
 律吾と名乗る侍の男が、何の理由なしに屋敷内の博打場へ立ち入ることはない。
「あの2人、このおれが始末いたしましょうか」
「始末するって、あいつらはもうここから去ってしまって……」
「心配することはない。どうせ、おれの顔なんかこれを被ればだれにも分からないからな。ふっふふふふ!」
 深編笠を被った律吾は、博徒連中の前で不気味な笑みを発していた。

· Web · 1 · 1