鳩が居なくなった国
『数百年前、鳩と言う空を飛ぶ生き物がおったそうな…。鳩は「平和の象徴」として人々から愛されておった。飛ぶ姿も歩く姿も愛らしく、様々な場所で見ることが出来たんじゃ。』
『でもどうしてその鳩は姿を消してしまったの?』
『そうじゃなあ…『平和の象徴』と言われておった鳩じゃったが、『平和のない国』でその生き物は生きていくことが出来なかったんじゃ…』
『かつてはこの国も平和だったのに…何故…。鳩は戻ってくるの?』
『…わしは鳩は戻ってくるとそう思い続け、もう50年は経った…。じゃがな、いつかこの国に平和が訪れる時、また…戻って来る。しかし…わしはもう年じゃ…。この国が平和になる前にわしは…』
『僕が……僕が必ずこの国を平和にして鳩を呼び戻してみせる!そして、おじいちゃんに必ずこの国で鳩が飛んでいる姿を見せてあげるよ!!』
『ありがとうな…。優雅に空を飛ぶ鳩の姿を一目でもいいから見てみたいものじゃな…。』
祖父は優しい声で僕にそう言いながらスモッグのかかった空をゆっくりと見上げた。