背骨が燃えている。腕も、腿の付け根も踵も、土踏までもが、まるで火を点けられたかのようだ。左手首に巻き付いた腕時計の、秒針のひと刻みすらも、焦燥を加速させてゆく。
ひたすらに真っ直ぐな一本道の床は無機質な白と黒で、全くと言っていいほど終わりが見えない。
——早く、早く行かねえと。あいつが死んじまう前に!
酸素が足りない。必死に口を開けて肺を満たし足を前に出す。世界は相変わらずモノクロのままだ。踏みしめる地面は白々しく硬質な音を響かせる。しかし向かわなくては。ここで挫けるわけにはいかないのだ。
こめかみを伝う汗を拭いもせずに、一心に走り続けた先、光の飽和が見えた。