突貫あむあかタイマンCoC風 

目が覚めると、そこは明らかに自分の部屋ではなかった。
白い壁、純白の調度品。据え付けられたたなは金属製で、壁に埋め込まれた電子時計が【01:00】のまま時を止めている。
「……こ、こは……」
頭が痛い。まるで背後を思いきり殴り付けられたような、そんな痛みだ。現状に至るまでの記憶が薄ぼんやりとして明瞭とは言い難い。それが、気持ち悪くてたまらなかった。
目頭を押さえながら、ゆっくりと起き上がる。まずは状況を把握しなければ。冷静を保つよう心掛けながら辺りを見回し、そして、背後に視線を向けて、

「……は、」

言葉を、失った。

突貫あむあかCoC風2 

それは、巨大な円柱型の水槽のようだった。いや、それよりは何らかの実験装置か、培養ケースと称した方が正しいかもしれない。
事実、分厚いガラスの向こうには、自由を奪われた哀れな何かが、誰かが、液体に全身を包まれて黒い髪を揺らめかせていた。
「……な、んで、あなた、が」
力の入らない体で装置に這い寄ると、ガラスに手をついて立ち上がり、揺蕩う囚われの生き物を見つめる。白い拘束衣、足首を底に繋げる鋼鉄の枷と鎖。瞼が閉ざされた顔は常の白磁を超え、青白いと言って過言ではない。鼻と口を覆うマスクと上から垂れた管によって最低限の酸素を供給されているようだが、だからといってなんの安心も得られはしなかった。
「……あ、かい」
掠れた声に、答えはない。
「どうして、こんな、あかい、あかいぃ!!」
悲鳴に似た叫びを上げながらガラスケースを殴り付ける。ドンと鈍い音がしたものの、皹の一つだって入りはしなかった。
「起きろ、起きろって言ってるんだ!!なんとか言え、言えよ!!あかいィ!!」
半狂乱になってガラスを叩く。右手に感じる痛みが、焦燥感を強めて止まなかった。

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突貫あむあかCoC風3 

なんだこれは、一体何が起きている?
混乱が混乱を呼ぶ。こんなに手の込んだことを、一体誰が、何のために?
息を荒げ、びくともしないガラスの檻に爪を立てながら膝をつく。液体に沈められ、浮き上がらないように拘束されたあかいは、まるで標本のように見えた。
「くそ、くそ……!!」
敵は誰だ?瓦解した組織に、ここまで大掛かりなことをする力を持つ者などほとんど残されていない。
狙いはなんだ?命を奪うだけならば、こんな悪趣味なシチュエーションを作る理由がどこにある。
わからない。何もかもが不可解だ。
「っ、くそ……」
言い様のない不安と恐れで、胸がぎゅうと締め付けられるようだった。
……そんなことを感じた、直後。
ー……ピッ ピッ ピッ ピッー
壁の方から、不意に電子音が、聞こえた。
「!?」
勢いよく振り向くと、埋め込まれた時計が動き始めている。一つずつ秒を減らしていく数字の上に、先程まではなかった文字が光っていた。

【サンソキョウキュウ テイシマデ】

【59:48】

「……うそ、だろ」
それは確かに、あかいしゅういちに残された、少ない命の時間を表していた。

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