◆お願いごと 

『どうかあの人と一緒になれますように』

それが始めの願い事であった。

『あの人といつまでも一緒で居られますように』
次にその娘がやってきたときに掛けた願い事であった。

『どうかあの人が帰ってきますように』
やがて娘が、やつれた顔で願いをかけた。

『あの子が無事でいられますように』
その娘の目はどこまでも暗く深く、淀んでいた。

『あの子が天国に行けますように』
涙も枯れ果てた、孔のような眼窩となっていた。

「殺してください」
最後に娘は、そう言った。声に出したのは初めてだった。

それからしばらくが経った。私のなかにわだかまった最後の願いは、黒い渦潮となって雨を呼んだ。その祈りは、「自分を殺してくれ」という意味だったのだ。

霊験などというものではない、ただの醜い憎悪が駆け巡る。
それはどこかの、人の縁を手繰り寄せる仕置き人に届いたのだろう。

冷たいしぶきの中に、空しく低音が鳴り響いている。

pawoo.net/media/XlLbRTXm2d8oiz

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