はる夏 @harusummer

 その日は王都に初雪が降り、オレは狭い路地裏に転がって、飢えて凍えて死にかけだった。
 ちらちら降る雪をぼんやりと見つめながら、雪って食えるのかなと考えてた。このまま死ぬんだろうと、自分でも分かってた。
 そんなオレが今生きてるのは、「食え」と放られた1本の焼き芋のお陰だ。
 皮が少し焦げてて、湯気が立つ程熱々で、いい匂いがする焼き芋。オレは夢中で半分を食い、半分を懐に入れて暖まった。

 それ以来、冬になる度に焼き芋を食うのがオレの楽しみだ。
「旦那様、またそんな物を」
 大店の商人になった今、従者には渋い顔をされるが、初心を忘れない為にもやめられない。
 初雪の降る日、スラム街に焼き芋の施しをするのもやめられなかった。偽善と言われようがどうでもいい。オレがあの日、あの芋のお陰で命を繋げたのは事実だ。

「食え」
 飢えて凍える子供らに、1本ずつの芋を放る。
 ちらちら降る雪を眺めながら、路地裏で立ち食いする焼き芋は、すごく美味い。
 芋に群がる子供らにも、この美味さを覚えてて欲しい。そしていつか、飢えた誰かに焼き芋を「食え」と放って欲しいものだ。

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