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雪の吹雪く極寒の地。寂しく佇む豪勢な屋敷の中。
少女の稚い上肢は、彼女より一回りも二回りも大きい少年の背へ回されていく。柔らかに少年を包み込んだ両腕は細く華奢で、見た目には頼り無いものであったかもしれない。然し、それだけでは推し量れぬ、感ぜられぬ安心感が其所にはあった。
大丈夫、大丈夫だよ。優しい声音で囁く彼女に、何だか全てを溶かされていく心地になる。嗚呼、屹度、屹度彼女は、自分の凍てついた表層をゆっくりゆっくり融解して、そうして現れた子供の僕と真正面から対峙しているのだ。
「ねえイヴァン、私と友達になろうよ。これでふたりぼっち、ふたりぼっち、もう独りじゃないでしょう?」
……何が大丈夫なの。如何して平然とそんな言葉が吐けるの。君は僕の何だって言うの。
けれども、唱えられた言の葉に、抱き締められたその温もりに、古い古い昔の記憶が蘇ってしまうのだ。恋しく懐かしいと思えて、胸の焦がれる気持ちで唇を噛む。自然と目尻から零れ出した涙は抑えようもなくぽろぽろと滴り落ちて、少女の肩口を濡らしていった。
此処にあるのは、唯二人の子供だった。