短文ようりこ⑧
梨子ちゃんが好きだって自覚したのは高校3年生の冬だった。
受験が控えてるっていうのに風邪なんか引いちゃって、だけどパパもママも忙しくて暗い部屋でひとりだった私の元に訪れてくれた梨子ちゃん。自分だって勉強大変なのに、私のところに来てくれた。
「曜ちゃんは寂しがり屋さんだから」
私の手を握って、そう言ってくれた笑顔に私は自分の気持ちを自覚させられたんだ。気持ちを言うつもりなんてなかった。言っても困らせちゃうだけで、お互いに大事な時期なのに余計なこと考えさせたくなかった。
全員の受験が終わって、そろそろ冬も終わりって頃に梨子ちゃんから言われたひと言。
「東京の大学に行くの」
てっきり地元の大学に行くかと思ってたから、頭の中が真っ白になった。
本当は私のお見舞いに来てくれた時、その事を言ってくれるつもりだったらしい。私に気を遣って言わなかったみたいだけど。
私はお見送りに行けなかった。ただ行き場の無くなった気持ちをどこに向ければいいのか今も分かってない。
好き。好きだよ、梨子ちゃん。
気持ちを伝えてたら、なにか変わってたのかな。
もう届かない気持ちをどうにかしてください。
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