今書いてるボロオナの冒頭 

その日は、運命に弄ばれているかのような一日だった。

経営するバーレスクの一番人気のストリッパーが食当たりで出勤できなくなった事が始まり。
それを目当てで来ていたタチの悪いヤクザ者から、金を返せとクレームが入り。適当にあしらっておけばいいものを、応対したのが血気盛んな若い衆だった為に大立ち回りが始まってしまい。
なんとか相手の組の幹部に話を付けて騒ぎを収め……しかしどこかの馬鹿が警察なんぞを呼んだ為に、後始末が難航した。
なんとか店の隠れ太客である警察のお偉いさんに連絡を取り、次回来店時の特上サービスを約束し、さてようやく帰れる……と一息を吐いたのだが。
喧嘩の爪痕が愛車にありありと残されていた。タイヤが全てパンクさせられていたのだ。
「あぁーーーもう……」
カラ松は深くうな垂れた。
怒る気力も最早残っていない。
「お、オーナー、俺送っていきましょうか?」
気遣わしげに声を掛けてくる部下に対し、カラ松は首を横に振る。
「いい。今日は歩いて帰る」
「歩いてって……えぇ?!」
「どうせ徒歩でも二十分程度だからな。じゃぁ、お疲れ」
「ま、マジすか……」

ボロオナ2 

部下達は慌て引き止めようとするが、カラ松はヤケだった。部下に八つ当たりこそしないものの、散々な一日に癇癪を起こしていたとも言える。
もういい。知るか。何も知らん!!
全てが煩わしいと、大股で店を出た。

明け方の外苑通り。
容赦のない寒さにコートの襟を合わせ、白んで行く空を見ながら、カラ松は歩く。
華やかな夜の姿ばかりを見ている為に、朝というのはどうも間抜けな感じだ。着飾るライトを失って、文字通り白日の下に曝け出されると、ただのよくある繁華街。浮かれ騒ぐ夜の名残に、酒の空き瓶やら脱ぎ散らかされた衣類やら吐瀉物やらなんやらに汚された街。
なんだって俺はこんな町のてっぺんなんて目指すんだろうなぁ。

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ボロオナ3 

カラ松はうんざりとした気持ちで思う。夜毎、如何にして客を集めようかと必死になってはいるものの、久々に自らの足で歩いてみれば全て価値のないものに思えてくるから困ったものだ。やはり、昨夜の騒動でだいぶ疲弊しているのだろう。いっそ全て放り出してしまいたいような気になってしまうが……そんな風に投げ出すには、カラ松の名前は大きくなり過ぎていた。
ただの小さな見世物小屋のようにしてスタートした店が、今じゃ六本木の名物だ。特にこの数年の伸び率は凄まじい。一晩に入ってくる金が、オープン当時の月売り上げを超えてしまう事もザラである。
そんな最近の実入りの良さと昨夜の騒動とを省みて……カラ松はふと考えた。
ちょっと最近、プラスが多過ぎたかもしれない、と。

ボロオナ4 

カラ松は、しゃんと伸びた背筋や自信に満ちた凛々しい眉、そんな男らしい見た目とは裏腹に、迷信深い面があった。あまりに良い事ばかりが起きていると、その反動でとてつもなく悪い事がやってくる……その昔、祖母から聞いたそんな話が未だに頭に残っている。一人でいい思いばかりをすると神様からしっぺ返しを食うのだと。
きっと昨夜のゴタゴタは、その兆候に違いない。ここまで調子が良かった分、少し還元しておいた方がいいのかも。
ならばどうする?
カラ松は頭を捻る。
客に還元したところで、満足度を上げれば最終的には店のプラスとなるだろう。だとすれば意味がない。店にも自分にもプラスにならない事をやってこそバランスが取れるというものだ。
では慈善事業でもやってみるか……と考えてみたものの、それもそれでげんなりだった。そういう事を始めると偽善だなんだと騒ぐ連中が出て来そうで面倒なのだ。
何かもっとひっそりと、個人的に出来る事で済ませたいのだが……

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ボロオナ5だっけ? 

うんうんと考えながら歩いていると、ガツ、と何かを蹴飛ばした。明らかに前方不注意だったので、障害物に気付かなかった。チラと見れば、それは巨大なボロ布の山である。
「おいおい……」
思わず呆れ声が漏れる。
歩道のど真ん中に、こんな大きなゴミを捨てていくなんて何処のどいつだ!
カラ松は眉間に深く皺を刻んだ。こういうゴミが放置されるから、この街の治安は悪くなる一方なのだ、と。
かと言ってこのゴミをわざわざゴミ捨て場まで運ぶかと言えば、そこまではしないのだが。せめてもっと端には寄せようと、爪先でそれを押しやろうとしてみて。
「んん……」
「!!」
ゴミが呻き、カラ松は大きく肩を跳ねさせた。なんだこのゴミ、生きてる?!
驚きにバクバクと打つ心臓を抑え、よくよく目を凝らしてみれば……ボロ布だと思っていたそれは、薄汚れたモッズコート。そして山だと思っていたものは、そのモッズコートを纏っている人間だった。フードをすっぽり被ってはいるが、頭部が少し覗いている。

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