@chiko_roro カン…ボォ~イ ②
「……」
あからさまに逸らした視線にもランサーは呆れた息を吐くだけだ。
確かに近頃、この男──腐れ縁の槍兵に言い寄られ、自室に招くようになった。厨房で食事の支度をしていれば手伝うことはないかと声を掛けられるし、模擬戦闘に付き合わされることも増えたし、レイシフト後に労わられることも少なくない。一度、理由を問うてしまったことがある。曰く「オレはオレのしたい事をしているだけだ」と。
感情を押し殺しながらも、感情を無くした訳ではない私は、彼の行為が憎からず思う者へ向ける類だと察してしまった。……有り体に言えば、絆されたというか。私の錆び付いた心に守護者風情にあるまじき感情が息を吹き返してしまっている。
だからこそだ。だからこそ、この歪な肉体が疎ましくて仕方ない。男にも女にも成りきれないこの身を彼に差し出せる訳もなく。
「オレは惚れたら抱くぞ。だんまりで見逃してやるほど枯れちゃいねぇ」
沈黙を貫く私に覆いかぶさった男は溜息と共に声帯を揺らす。耳元に落ちてきた言葉は非道とも取れるものだが、その裏には確かに戸惑いと欲があった。余裕が無いのは彼も同じらしい。