マフィアなのか893なのか分からん1と潜入捜査の3 

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@aoituki8
部屋は地下にあるのだろう。階段を引きずり下ろされた記憶がある。この部屋の湿って澱んだ空気にはカビ臭さが混じる。
家具は簡素なベッドと木の椅子、小さなテーブル、ぐらいだろうか?見える範囲にはその程度しかない。

驚いたことに、目隠しもされてないのだ。薄暗いが、明り取りの窓から陽は差している。この角度なら、正午前後か。真昼間、というやつだ。

階段を降りる複数の足音、部屋の前に止まって鍵を差し入れ回す音。開いた扉の向こうには黒いスーツに黒いシャツ、真紅のネクタイ。

ここまでか、と腹を括る。どうせ死ぬなら何人か道連れにするか。出来ればこのボスを狙って逝きたいが、チャンスがあるかどうか。

「目ぇ、死んでないねぇ。無表情を装ってるけど、ギラギラしちゃってるよぉ」

いつもと変わらず楽しそうなボスの声。取引は成功した時も、失敗した時も、裏切り者が出た時も、裏切り者を始末した時も、こんな声を出す。

チッ、と舌打ちをしてしまった。ボスの後ろに控えていた顔見知り達が一斉に銃を取り出して撃鉄を起こした。和音が鳴り響く。

全ての銃口が自分に向いてるのを眺めて実感しようとした。

@aoituki8
けれども、全くもって死への恐怖が湧かない。画面の向こうから向けられているようだ。

ボスの手がヒラリと翻され下ろされた。途端に銃口も下を向き、安全装置をかけられる。
このせいか。結局の所、ボスの命令がなければ誰も引き金に指をかけない。それが見て取れていたのか。
俺なら、ボスの命令よりもボスの存在を守るのにな、と意味の無いことを考える。

無造作に椅子に腰を落として長い脚を組むボスから視線を外さない。他の奴らは意味をなさない連中だ。自分の判断で銃も撃てない。

「んで、聞きたいことはたくさんあるんだけどさぁ」
そのために生かされていたのか、と納得をする。どうせ聞き出したら鉛玉をぶち込まれるだけだ。ならば。
「都会生まれだから、打ち捨てるなら海でも山でも田舎でも」
「最近のブームはダム湖だよぉ~」
「他よりも見つかりにくいしな」
そう応えればニンマリとされた。

@aoituki8
「せっかく幹部候補まで来たのに、なんで裏切っちゃったの? そっちの組織とうち、どっちが居心地良かった?」
居心地は別にどちらも良くはない。どこにいたって周りは敵だらけだ。
「そうだね、片腕……いや、ボスに成り代わるまで頑張っても良かったかもね」
軽口を叩きあいながらも、ボスの探る目は変わらない。もちろんこっちもだ。いつどんな目に合わされても逃げるか反撃するか、場合によっては耐えるか、対応できるよう意識を強く持つ。

「お前ら、戻ってろ」
ボスの言葉に一瞬ザワっと騒いで無言で男達が出ていく。僕が知ってる範囲ではこんなことはなかった。
閉じた扉の向こうから「ボスの悪い癖が」とか「可哀想にな、あいつ」とか聞こえる。
そう言えば返り血を浴びまくったボスを見たことがある。
嬲り殺しにあうパターンか。

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