ようやく覚醒
「──お母様!!いつになったら私に領地を下さるのっ!?……あれ?」
何かに掴みかかるような勢いで気絶した体勢からがばぁ!と起き上がったクロウは、きょとんと目を瞬かせた。
「……あら?お母様の夢を見ていたような…?何だか体が怠いわね……」
ゔーん、と頭を捻りつつ心做しか重い体を引きずって立ち上がる。
「はぁ。結局飛べなかったわ…」
よろよろと縋り付くように部屋の扉を開け、外へ出る。
「…誰も居ないのかしら?…お腹空いた…。」
体の芯に残る怠さのせいか、飛べなかった落胆からか、肩を落として下を向き、何やら白い紙のようなものを発見する。
「…?何かのメモかしら…えぇと…"ともだちになって"?…うーん、エレクティさんはもうお友達だし……お友達…ソーダアイスみたいな宝石の子かしら…?」
メモを手に考えながら、クロウは食堂へ向かった。
独りぼっちの踊子
黒い薔薇の揺籃でゆらゆらと揺れる夢を見た。
ひとつしか知らない子守唄、優しげな誰かの声。
誰だろうか、と思うまもなく
「……まま。」
口から飛び出した言葉から言いようのない苦味が口いっぱいに広がる。
なんで、
「どうして、」
─────てくれないの?
体を包み込む花びらにも不快感と嫌悪感を抱き、優しく手を差し伸べられるような感覚を引き剥がすように乱暴に掴んで…
ティエルは目を覚ました。
「………。あさ?」
酷く不快な夢を見ていた気がする。
夢の後味を振り払うように顔を擦り、眠る前よりも広がっている白さに気がつく。
「……おどら、なきゃ」
殺風景な部屋をふらりと出ていき、くるくると踊りながら足の向くまま移動し始める。