紫苑 boosted
紫苑 boosted
紫苑 boosted
紫苑 boosted
紫苑 boosted
紫苑 boosted
紫苑 boosted

魔法使いの出生の話 

摩訶月の魔法使いは童話本の文字から人の形を成し生まれた。
闇の魔法使いは足を離れて取り残された人影から水たまりのあぶくの様に生まれた。
夢の魔法使いは誰かが夢に見て描き生まれ布団から這い出てきた。
時の魔法使いは古時計の振り子のドアから出て来て生まれた。
変幻自在の魔法使いは形無き心や風、水や音などが寄り集まってモスクで生まれた。
自然の魔法使いは大きなベンガル菩提樹の幹の部屋から生まれた。
愛の魔法使いはトリンケットボックスの中のダイヤの指輪から人の形を成した。
予言の魔法使いはイースターエッグから常夜の魔法使いの手の平で温められながら生まれた。
常夜の魔法使いは先代に連れさらわれて来た。
と個人的に彼らの母親はベットだったり木だったり箱だったりするのだろうと思っている

紫苑 boosted

理想の魔法使いの話 

誰もが寝静まる時間に優しく揺り起こして、ひっそりと他の誰にも見つからぬ様に 人をさらっていく魔法使いが良い。
バロック絵画みたいに深い深い影を帯びながら 闇に何故だか人物がくっきりと見える様に、月明かりの下 魔法使いしか眼前に捉えられぬものだから、それに導かれるうちに世界は異なる場所に踏み入れてしまう。
やがて、枕もとでおとぎ話を聞かせる様な落ち着いた甘やかな声で魔法の話をしてくれるだろう。
深紅のカーテンやステンドグラスのランプ、ヴィンテージアンティークの世界。夕方から夜が更けり、また夕方が来る。
そうしている内にいつの間にか自らも魔法使いに挿げ替わる。
これが、常夜の魔法使い。

紫苑 boosted
紫苑 boosted

馨秋 

 だらりと力無く下ろしたままの左手から、真っ赤な雫が滴り落ちる。
「かおるにいさん」
 あいたい。こんなに会いたくて、あいたくしてたまらないのに。ぱっくりと開いたままの傷口。其処から次々と溢れ、滴り落ちる赤。赫。紅。朱。緋。黙って見つめていれば、眼球の奥から滲み出した涙が音もなく傷口に零れ落ちて。赤に混じって、浸食されて、溶けていく。
 軽い音をたてて右手からすり抜けたのはちっぽけな果物ナイフ。鈍く光る刃物は、綺羅々々と私を嘲笑う。
 ごめんなさい。あと少しであなたに会えるのに、この腕がもう動かない。あと、ほんの少し、深くナイフを押し当てれば、あえるのに。
「ごめんなさい」
一緒にいられなくて、ごめんなさい。一人にしてごめんなさい。許して欲しい、だなんて言わないから、隠世へ行っても、私のことを忘れないでほしい。
 あなたの居ない世界を生きていく勇気も、あなたの居る世界に足を踏み込む勇気もない。どちらを選ぶことも出来ない私は、動けずに只泣きながらうずくまるだけだ。
「おねがい、にいさん。かえってきて」
 この部屋に残っていた兄さんの香りは既に消え、沈んだ影は二度と動きそうになかった。

Pawoo

The social network of the future: No ads, no corporate surveillance, ethical design, and decentralization! Own your data with Mastodon!