右回りの幸福
主たる彼女とはじめて出会った時に僕に全くの落胆が無かったと言えば嘘になる。
元主の細川忠興は熾烈ながらも様々な才に通じた文化人であったし、奥方も異国の血を引いた美女であったから。
目前に現れた垢抜けない洒落さも見当たらない彼女に少し下がりそうになる口角を引き上げて口上を述べたことをよく、よく憶えている。
時間はあっという間だった。
人の身も慣れぬうちに内番、出陣。それが終われば生きる身故に何かしらを口に入れ、身を清め、休息を取る必要がある。
はじめて口にしたのは、彼女が炊いた米とインスタントの味噌汁だった。今にしてみれば随分と質素な食事だったが、はじめて人の身を得た僕にとっては驚きの連続で。
いつだったか一緒に桜を見ようと言われ「おやたまには風流なことを言うものだ 」と嬉々として彼女の好きなおかずを詰め合わせたお弁当をこさえて準備をしていたら、駆け込んできた張本人に急用が入ったと断られた。
僕はその時に「ああわかったよ」と、とても聞き分けのいい振りをした。それでも。それこそ、あの日彼女を見た時以上の落胆があって僕はああとその時にようやく気付いた。
っていう歌さに美味しい
あと新刊二種。
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臨時にこさえてみました。
妄想とか色々だと思います