小枝🎨 @22554517@pawoo.net

私は人の尊厳を守るというのはその人の主体性を無いものとして扱わないということなんじゃないかと思うんだけど、そうすると手伝う行為って実はすごく難しいことだよね?その人が何をどの程度必要としているかはわからないから。助ける側がそれを見誤ったらダメ、というわけではなく、そこでお互いにきちんとコミュニケーションを取ることが大切なのではないだろうか(聞いてるかファビウス!!そして村の人たち!!)。
あとちなみに、村の人たちがファビウスとの関わり方わかってないのは彼らが他に彼のような人間を見たことがないというのも原因の一つな気がする。どういうことかというと、残酷な話だけどぶっちゃけ医療水準・衛生環境のめちゃくちゃ悪い彼らの社会では酷い怪我を負ったりした人はだいたい命を落とすんですよ。ファビウスはひたすら強運というか、強靭な生命力の持ち主だったんです。

女って身構えずにひとりひとりに対してちゃんと一人の人間として向き合いなよ、嫌なことはキレずに冷静に言葉で伝え、相手のことも知ろうとしなよ、と言ってやりたい。でも彼にそう言ってくれる人はいなかったようだ。
というかね、問題はそれ以前の場所にあると思う。そもそも村の大人たちはファビウスと周囲の子どもたちとの関わり方をどう思ってたの?どう教育してたの?
現代社会にも残念ながら差別や偏見は根強く存在しているけれども、ファビウスたちの社会はその比じゃない。おそらく彼らの世界では、"障害児"は基本的に(本人の意志に関わらず)家から出ず家族に何もかもを世話され他人とは関わらないのが普通なのだろう。そんな世界で誰がファビウスの出来る事を認め対等な立場で友情を築くようにと子どもに教育するだろうか。彼らは薄っぺらく「仲良くしてあげるように」と言うだけで、その言葉は「彼は劣っているからお前たちが手を差し伸べてやりなさい」と翻訳できるのではないだろうか。
さっき"比じゃない"って書いたけど正直これはあらゆる形で今も残る優しさのはき違え、人の尊厳を踏みにじる行為だ。私はそういう行為を許せない。

女の子アレルギー状態のままいつしか思春期に突入して「女の子観」は人並みに"恋愛対象"にアップデートされるんだけど(ファビウスは異性愛者)、その過程でも彼は何か失敗しているような気がするんだよね…。そしてその主たる要因は間違いなく右腕のことでしょう。
皮肉なことに、思春期に突入し体が大きくなって筋肉もつくにつれて「隻腕の体でできること」は間違いなく増えるのに、同時に「隻腕であること」に対するコンプレックスも増大していくのだ。元々苦手意識があって関わってこなかったから仲の良い女の子もおらず、関わり方もわからず、そこに重いコンプレックスがのしかかって更に身動きが取れない。
初恋の相手も蓋を開けてみたら"ファビウスのこと何でもお世話してあげたい病"タイプで、それで彼はかなり傷ついて。追い討ちをかけたのは、本編開始のちょっと前、仲が深まりかけてた子に腕のことを理由に拒否された一件だった。

ファビウスは(左オンリーだけど)腕相撲ありえん強くて、非力なクロエなんて全体重かけて挑んでも勝てないんじゃないかと思うんだけど、それ以前にそもそも女の子に触れられる?ファビウス?と思って、彼の所謂"童貞"的な"女の子耐性のNASA"は一体何処から来るどういう類のものなのかと考え込んでしまったのだけど。
まず他人との関わりについて性別によって線引きするような考え方をしている時点で色々とアウトだよね。なんでそういう考え方に至るかってのは世の中に今なお蔓延る根深い問題に行き当たってしまう気がするんだけど、ファビウスについて言うなら過去のトラウマに囚われているんじゃないかと思う。
小学生くらいの女子ってやたらと周囲の世話焼きたがる子多いじゃん(もちろん全ての女子がそうだとは言わないけど同年代の男子と比べるとそういう傾向はある気がする)。ハンデを抱えたいじめられっ子の幼いファビウスは、彼女らの100%善意による過剰な世話焼き行為の格好の餌食だった。だが彼はそういうことされるの我慢ならない性格なのだ。だから彼はまず幼少期の段階で既に女の子アレルギー状態に陥っていたと思う。

クロエについては今後のネタバレになってしまうのであまり詳しくは語れないけど、彼女の自己に対する意識の覚束なさ、自分に立てられたフラグを無意識にベッキベキ折っていくスタイルは、なんとかしなくちゃならないなと思うところ。他人に対してはいつも誠実なのに、肝心の"自分"というものがいつも思考から抜け落ちているような…。
クロエがハキハキグイグイと周囲を巻き込み進んでいくのは、そうすることで自分の立っているその地面がいつかガラガラと音を立て崩れ落ちていってしまうのではないかという恐怖から目を逸らしているのかもしれない。
彼女、動いていないと怖いんだよ。腰を据えて自らについて深く考えることが怖くてできないのだ。

ファビウスは実はとても冷静な部分を持ってるという話にも繋がるんだけど、幼い頃から片腕で生きてきた彼はどんなに悔しくてもどんなに頑張っても自分にはどうにもできないような他人との物理的能力差というものがあると体感でわかっているから、物事に対して自分がどの程度それを達成できるかというのを常に頭の片隅で量っているのだろう。だから必ずしも周囲のやり方を踏襲して頑張るのではなく自分なりに上手くできる最善の方法を取る。ある種の諦観とも言えるし、でも創意工夫とも言えるよね。
パラメデスは人生で一度もそんな考え方をしたことがないと思う。彼はやってできないことなんてない(と思っている)から。ある意味いつも正攻法で生きてるし、何かを選択する時に究極的には「自分の心が向くもの」以外のパラメータ(能力的な制限など)を考える必要がない。だって能力はあるから。そう、パラメデスの方が断然選択肢が多い。
だから、"考えなしで感情的なファビウス"と"冷静で合理的なパラメデス'という構図は、局面によってはまったく逆転してしまうのである。

パラメデスに関しては私は素直に諸手を挙げて溺愛できないところがある。彼の性格のドロドロした嫌な部分が邪魔をして「そう簡単にこいつに幸せを与えてやってたまるものか!!」「絶対主人公に据えてやるものか!!」みたいな屈折した気持ちになるんだよな。ごめんね、悪いけどきみはどうあがいてもとかげの王子の主人公にはなれないよ。
それでも彼を憎めないのは、あれだけ立ち回りが上手くて打算で生きていて他人のことなんてどうだっていいって内心思っているような人なのに、物事の決断を迫られた時に最後の最後には好みや感情に従ってしまうのだ。ここまで散々効率や合理や正しさという言葉で積み上げてきたものを何故!?って感じで。
そして逆に最後の最後で合理的な判断をするのは実はファビウスの方なんだよ…それはそれで、お前は散々直情的な振る舞いをしておいて何故…

パラメデスは勿論両親から愛されて育ってはいるけど、問題児な兄や二歳下の妹、病弱な弟に囲まれてるとやっぱり兄弟の中では放っとかれ気味感は強い。
本人は"かまちょ"を軽蔑しているような節があるけど、小さい頃なんかは本当は「ママかまって!こっち向いて!!」と思ったことだってないわけではない。でも元々わりと淡白な気質なのか自意識とカッコつけが激しいタイプなのか、小さい頃から振る舞いがクールで決してかまちょしない。
暴れ回って必死に自己主張して周囲の気を引こうとする兄アレウスとは正に対極。
そういう村のアホ男子どもとは一線を引いた振る舞いが、同年代の子たちにはなんだかオトナっぽくてカッコよく映るんだよね、わかる。でもね、彼は本当は年相応にもがく年相応に未熟な何の力も持たない痩せっぽちの17歳だ。
そうやってパラメデスがいかに実体のない虚構に生きているかに思いを馳せるとき、私は心が重い。虚構に足を取られもがく彼を救い出さなければ。でもそう簡単には救い出してやんないからな。

確固たるものなんてそう簡単に手に入るものじゃなし、そんなものはあってないようなものだし、彼のそのヒリヒリするようなもがきは極めて"10代後半"的だ。しかし彼は人生の早い時期に、ファビウスという(それが良いか悪いかはともかくとして)すれ違ったら誰もが二度見するような人間に出会ってしまったのだ。
パラメデスがファビウスに対して抱える"クソデカ感情"の中には少なからずある種の憧れや羨望が含まれている。
でも彼がファビウスに「お前は俺に無いものを持っている」なんて言ったら、側から見たら何それ嫌味!?性格悪!!って感じだわな。
パラメデスは実際自分のこと性格悪いなって思ってる。
当のファビウスは腫れ物扱うようにされるのはイヤなのでパラメデスが遠慮ない物言いをすること自体はむしろ気が楽なんだけど、でも正直そんなこと言われてもパラメデスの真意には気づかない、というか理解できるわけがない。

パラメデス、あなたの親友は決してあなたの心の奥底にある葛藤をわかってはくれないんだよ。

ファビウスはどうやったって無視できない物理的な不自由さを常に抱え、一方でパラメデスは器用で賢くて何だってできる。しかしある視点で見れば明らかにファビウスは「持ってる」者でパラメデスは「持たざる」者である。
パラメデスが自分の高い価値を認められるのはあくまで他人と比較した相対的な指標においてであり、一方ファビウスは往々にして前提条件が違うからその土俵には乗れないわけで。でもだからこそ、彼を評価する言葉は比較対象のない絶対的なものなのかも。
そう、西部の村のオリーブ農家という言ってしまえば何の変哲も無い家庭の、八人兄弟の五番目に生まれたパラメデスはきっと「確固たる自分」を求めてもがいているのだけど、パラメデスが"優秀な人間"であることの背景にはそもそもの生まれ持った適性や兄への対抗心の他にやはり「そうありたい」と思う強い意志があるのだけれど…

ん???本編開始時点が革命から15年後だという最重要事項を何処にも書いたことがないっぽい……!?!?
本編は革命から15年の月日が経過した年の春から物語が始まっています。この時系列の重要な点は、パラメデスやクロエは革命時に既に生まれてはいたものの当時の記憶はないということ、そして恐らく彼らが“覚えていない”最初の世代––––言うなれば“ポスト革命世代“だということ。

ゼネのミタニア人居住区に生まれ、幼少期に王党派の攻撃により町を追われた人たちは、臨界期までに習得したルサティス語を流暢に使いこなすものの、子どもの頃は確かに家族や近所の人々とのミタニア語によるコミュニケーション・日常生活を経験しているはずで、つまりその(第1話時点で20代前半くらいの)世代がミタニア語を知る最後の世代なのだ。

ミタニア人はルサティス人とは全く異なる言語体系を持っていたけれども、被支配階級としての数百年が言語にも多大な影響を及ぼした結果彼らが“ミタニア語”と呼ぶものは実際は語彙や文法面でかなりルサティス語に飲まれつつあった。しかしそれ自体もミタニア人がルサティス人社会に融合していく中で徐々に消えていき、代わりに“ミタニア人風のルサティス語“とでも呼べるような言語変種に交代しつつあった。
“ミタニア語”の日常会話での使用が最後まで残っていたのはゼネのミタニア人居住区だったが、そこは革命時に王党派によって破壊し尽くされた。この事件が言語消滅の決定打となった。
言語の呼称なんて恣意的なものだけども、敢えて言うなら現在ミタニア人の血を色濃く受け継いでいる人々がしゃべっているのはあくまで「ルサティス語の変種」である。

ある特定の史実を元にするとあれもこれも参照して"整合性が取れるかどうか"を検証したくなってしまう性だから(だから時代考証とか大好きなんだけど)、敢えてフワフワさせといて自分でこねくり回せる要素を残しておくというのはなかなか都合良くて便利で楽しいかも、特に描きたいものを描きたいだけ自由気ままな趣味でやってる分には

ルサティス人の文化
・服飾 南下の過程で先進的な文明と接触したから服装がそういう感じ でも馬に乗りやすいようにってのと寒い地域にルーツがあるからズボン履いてるのかな… 男女とも髪を伸ばすのが習慣 刺繍や装飾品は丁寧に描きたい一方庶民は質素なものしか身につけられなかったんじゃないかと思うジレンマ
・言語 ルサティス語は…印欧語族なんじゃ…ないかな…?? thとかshの音なさそう 文化的影響受けまくったおかげで彼らはルサティス語固有の名前より"進んだ文明を持つ異国風"の名前をつけたがる 文字を扱うのは特権階級のみで、口承文学が基本 島内でもある程度方言差はある
・料理 オリーブとチーズとミントと蜂蜜とナッツとワインと果物と(トマトとジャガイモ以外の)野菜 ときどき肉 沿岸部では魚介も パンもある
・宗教 多神教なんだけどもう移動の過程で色んな土着の信仰取り込んでごっちゃごちゃになってるんじゃないかなー その辺ゆるゆるだと思う ただ町村毎にある神殿が住民を取りまとめているのは確か
・住居 石造り 石灰質の山岳地帯多いから木材はそんなになさそう 都市部は水道が整備されていたりする(すごい!)

とりあえず、こう見えて実は権謀術数渦巻くドロドロ宮廷野心むき出しロイヤル闘争大好き人間だから、いつかのタイミングでテスクベ島の権力者たちのそういう泥沼ハードボイルド描くぞと決めている
それ自体も好きだし、それがいわゆる"庶民"の生活そして人生にどのように影響を及ぼすのかってのもある意味残酷だけど、考えてて興味深いところだよね〜

もう子どもじゃないけどまだ大人には未熟な思春期ティーンズの情けなくやるせなくともまっすぐで瑞々しい恋と友情のハートフル冒険ストーリー……(?)みたいな軸とは全く別に、自分の中に長年ある「革命(というかある共同体における社会体制の劇的な変化?)はそれ単体で大きな衝撃だけど、それから十年二十年経ったとき、果たして過去のそれはどのような意味を持ってくるのか」というボンヤリとした問いを、思考実験のような形で検証したい…という大仰なテーマがある(小っ恥ずかしいけど)
あと「アイデンティティ」というものについても考察していきたい
自創作世界には少なくとも近現代的発想やナショナリズム的思想は存在していない設定だから、できるだけそういうバイアスは排除しつつ…(現在を生きる人間が作る以上完全に排除はできないとは思うけど…)

今描いてる創作漫画を古代地中海地域っぽい感じの世界観にしたのには色々経緯があるけど、まず私がこの話を思いついたきっかけが神話時代の古代ギリシャが舞台の小説を読んだことだから、そのイメージ。当時まだ世の中を何も知らない中学生だったこともあり、脳内に浮かんだ登場人物たちの原初案は、色素の薄いいわゆる北欧やスラヴ系の容姿であるにも関わらず大雑把に"古代ギリシャ人"という設定だった
いつしか南欧はもっと褐色系の髪や瞳の割合が高いと気づいた時、別に史実を元に創作しているわけじゃないからむしろ全く架空の民族捏造していいんじゃない?という気分になった
この架空の民族を想定するという作業が実はすごく面白くて、例えば民族系統的には北方にルーツを持ちながら温暖な島に定住していることから彼らの風俗習慣を原住地、移動や異民族との接触との過程、定住地の気候風土を踏まえながら想像したり
私は奇想天外な発想力は持ち合わせてないけど逆に材料を集めてきて「これらの条件が揃ったらどうなるか」を理詰めで考察するのはとても好き
もはや創作というより埋もれた歴史を史料から解き明かしているような気分になれる

【ルサティス人の略史3 革命と人々の生活】
世襲支配が続くと有力貴族や商人との癒着も深刻となる。特に不満を募らせたのは第二の都市ラキアの市民である。太陽神の神殿を中心に学術文化の花開いたラキアでは神学者が王家の神官世襲を批判、他にも経済的待遇や疫病の流行などの要因が重なりついに革命が勃発。結果王家と有力上級貴族の殆どは倒され、新たな最高神官が就任した。現在平野部の土地は主に中小貴族や彼らから土地を買い取った平民のもので、彼らは荘園経営というよりは土地を貸す大家程度の規模の場合も多い。革命以前の状況からは様変わりした。
一方西部の入植地は農民自らの土地であった。しかし狭く痩せており大都市からの距離も遠いとなると、大量に貨幣を稼ぐこともできず近隣の村同士や市での交易が細々とした収入源である。土地があり自給自足が可能で飢えることはないが、あまり発展もない状態が長い間続いている。

【ルサティス人の略史2 国の発展】
王は同時に宗教トップであり、当初は最も優秀な神官が選出されて就任していた。しかし次第に形骸化、やがて有力貴族であったダルダニウス家の実質世襲制となる。
国が安定し人口が増えるにつれ進んだのがミタニア人の解放と西部の入植である。
人口増加で仕事が足りなくなると、職にあぶれた平民よりも奴隷の方が良い生活をしていると不満がたまるようになる。これがきっかけでミタニア人奴隷の解放が進むのだが、解放奴隷に対する住居や職業といったサポートは行われなかったため、彼らは今なお貧困層が大半で都市部のスラム街に多く居住している。また現在も地域によっては根強い差別感情が残っている。
人口増加による土地不足はまた、「未開の地」西部への入植を後押しした。しかし山岳地帯であり土地も肥沃とはいえず、村落が点々と連なるのみ。今日ではしばしば発展に取り残された地域として問題視されることも。