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いちる @ichiru@pawoo.net

相馬は、オレの言っていることが良く分からないという顔をしていたが、オレもあえて説明はしなかった。何で家に帰りたくないのかとか、他にも色々聞きたいことがあったとは思うが、相馬は何も聞かず、俺に一室を貸してくれた。一日だけのつもりだったが、いつまででも居て良いという相馬の言葉に甘えて、暫くやっかいになることにした。そうなってくると、流石に家に連絡しない訳にもいかず、兄の伊若に一方的に暫く帰らないことを伝えた。

それから三日後のこと、バイト先に今度は兄の伊弦が俺の前に現れた。どのみち、兄貴に逃げ隠れは通用しない為、直ぐに見つかると思っていた。とはいえ、伊若よりは話しが通じるので、無理に連れ戻そうとしたりしないし、伊若にもバイト先のことは黙っていてくれるそうだ。理解があるのか、あまり関わりたくないだけなのかは謎だが、俺にとって悪い状況ではないから、良しとしよう。
そう思っていた数日後のこと、俺は兄貴に一つ口止めし忘れていたことを、"あいつ"に会うまで気付かなかった。

そう確認せずにはいられなかった。相馬は、そんな俺の素朴な疑問にきょとんとした顔で答えた。
「ええ、一人ですけど‥あーでも、たまに使用人が来ることもありますけど、基本的にオレが呼ばない限り来ないので安心して下さい!」
「使用人って‥お前ボンボンだったのか‥」
「いやぁー別にボンボンって訳でもないんですけどね」
ボンボンの暮らし方以外のナニモノでもないと思ったが、苦笑する相馬がこれ以上深入りして欲しく無さそうだったから、それ以上は何も言わなかった。深入りして欲しくないのはお互い様だしな‥。
「それより!何でうちに来てくれたんですか?」
「何でって、お前が誘ったんだろ」
「まぁ、それはそうなんですけど、メモ渡した時、あんまり乗り気じゃなさそうだったんで、来てくれないと思ってました」
確かに相馬の言う通り、あまり乗り気じゃなかったし、マンションの前まで来て一回帰ろうとしていたが‥。
「他に行く当てが無かったのが一番の理由だけど‥お前の字が予想外に達筆だったから、っていうのも理由の一つかな」
「字が‥達筆?それが理由なんですか?」
「まぁな」

その日、バイトを終えた俺は、結局相馬の所以外に行くあてもなく、貰ったメモを頼りにあるマンションに辿り着いた。
「本当にここかよ‥?」
一人暮らしをしていると言っていたので、レオパ○ス的でアレな所を想像していたんだが、一人暮らしにはそぐわなそうなマンションで、本当にここに住んでるのか正直疑いたくなってきた。
「あれ‥俺、からかわれた?」
少なくとも人のことをからかうような奴ではないと思っていたが、そもそもそんな知った仲ではない。疑心暗鬼になって、本当かどうかの確認すらせずに、やっぱり帰ろうかと振り向いた先に見覚えのある奴を見つけた。そいつも俺に気付くと、ぱっと嬉しそうな顔をして、こっちに近づいて来た。
「双海先輩っ!来てくれたんですね!!」
「え‥あ、まぁ‥」
「それじゃあ、どうぞどうぞ!こちらでーす!!」
相馬の勢いに若干押されつつ、案内されるまま着いて行くと、やっぱり学生の一人暮らしとは思えないデカい部屋に通された。
「お前‥一人暮らしなんだよな?」

真部は最初に相談した友人の名だ。あいつなりに気を利かせたつもりかもしれないが、こいつに話すのは人選を間違っている。こいつは、1年の相馬(そうま)とか言う奴で、何故か一方的に懐かれて困っている。基本、人見知りはしない、誰とでも抵抗なくしゃべれる奴で、嫌いではないが、俺が苦手とするタイプだ。とは言え、無視し続けるのもどうかと思い、話しを繋いだ。
「だったら?」
「うち来ませんか!?オレ一人暮らしで、部屋余ってるんで、是非!!」
確かに藁にもすがる思いで泊めてくれる奴を探していたが、一方的に懐かれ、ほぼまともな会話もしたことのない奴の所に泊まるのは、流石に如何なものかと思うのだが‥。そう思い、断ろうとしたのだが、俺が口を開くより先に、相馬は俺に一枚のメモを押し付けた。
「何これ?」
「うちの住所が書いてあるんで、気が向いたら来て下さい!じゃあ‥」
それだけ言い残して、相馬は足早に去って行った。相馬の後ろ姿を見送りつつ、俺は受け取ったメモを見て一言呟いた。
「意外と達筆だな」
予想外の達筆さに関心しながら、俺はメモをズボンのポケットに突っ込んだ。
「取り敢えず、バイト行くか」

そもそも、人付き合いが得意ではない俺に、当てに出来る友人がそんなに居るはずもなく、その後、2、3人に声をかけてはみたものの、急過ぎるからとか、彼女がいるからとか‥様々な理由で断られた。結局、バイトの時間になってしまい、キャンパスを出ようとしていた所で、あまり会いたくない人物に遭遇した。
「あっ双海せんぱーい!やっと来た!オレ、ずっと待ってたんですよー!」
過剰な歓迎を無視して、俺はそいつの横をすっと通り抜けた。
「えっ!?ちょっと、ヒドイじゃないですか、置いていかないで下さいよー!」
そいつは俺の無視にもめげずに走って来て、俺の隣を歩きながら、話しかけてきた。
「あのっ真部(まなべ)先輩から聞いたんですけど、先輩が泊まるとこ探してるってホントですか!?」

「つか、お前が泊めて欲しいとか珍しいな。家に帰りたくない理由でもあんのか?」
飄々としてて、何を考えているのか良く分からない奴だと思っていたが、こう言う時だけ妙に鋭くてあなどれない。俺はそんな友人に本音を気付かれまいと、言葉を濁した。
「別に‥特にこれと言った理由はない。ただ‥何となく帰りたくない時だってあるだろ?」
「ふーん。何となく帰りたくないねぇ」
当然それで納得する訳もなく、何か意味を含んだ様な言い回しをする友人だったが、それ以上詮索をしてこうようとはせず、後少しだったカレーを平らげると、トレーを持って立ち上がった。
「じゃあ、気が変わったら連絡くれよ。泊めてくれそうな女なら紹介してやるからさ」
「あーそりゃどうも‥」
友人の適当な話しを軽く受け流した後、一人取り残された俺は、途方に暮れていた。
「他に泊めてくれそうな奴なんて居たっけな‥」

その日、俺は大学に来て講義を受けて、そして家に泊めてくれる友人を探していた。昼休み、学食で味の微妙なラーメンを啜りながら、俺は向かいに座って美味そうなカレーを食っている友人に向かって言った。
「なぁ」
「んー?」
「今日お前ん家、泊めて」
「嫌だ」
即答だった‥。まぁ、予想通りと言えば予想通りの返事なのだが、全く予想に反してなくて、いっそ清々しいとさえ思えてくる。だからと言って、はいそうですかと、諦め切れない俺は別の質問を投げかけた。
「じゃあ、誰か泊めてくれそうなヤツ知らない?」
友人は持っていたスプーンを俺の方に突き付けて言った。
「お前の、その顔があれば、いくらでも女が泊めてくれんじゃね?」
「どの顔だよ。大体、お前と一緒にするな。付き合ってもない女の家なんか泊まれるか」
「じゃあ、諦めろ」
友人はバッサリ切り捨てた後、それでも一応気にはしているようで、根本的な質問をしてきた。

『神あそび』第3話タイトル未定。先行公開はじめます。初馬視点です。

※1、2話はサイトにUP済み。登場人物は画像添付します。 pawoo.net/media/4-dgthnL9ay0yX

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